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フランス

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世界各国での人口における原発性免疫不全症候群(Primary Immune Deficiency Disease, PID)の発症数(有病率)は正確には明らかにされていません。

ヨーロッパ諸国の多くの国々では、PIDの有病率を推定するための健康調査は実施されていません。ヨーロッパにおいても、他の国々と同様に医療従事者および患者さんのPIDに対する認識が低いと考えられています。この認識を高めて、ヨーロッパでのPID患者の実数を確定するため、European Society for Immunodeficiencies(ESID)は、1994年にヨーロッパ全体のPID患者の登録を始めました(1)。今のところ登録されている患者さんは約1万例にすぎません。これは、PIDに対する認識不足とPIDの過小診断によるものと考えられます。

フランスにおけるPIDの推定有病率

フランスにおけるPIDの推定有病率

ヨーロッパでのPID患者は150万例にのぼり、重症例は6万例であると推定されています(2)。 PIDの有病率はEU加盟国の間で大幅な差がみられます。フランスでの有病率は10万人あたり約3人で、北フランスの方が南フランスよりも有病率が高い結果が出ています(図)(3)。確認されているPID症例の約3分の2は小児例です。

フランスの有病率は、一見、極めて低いように思われますが、2006年に開催されたEU PIDD Consensus Conference によれば、250~500人あたり1人と、当初の予想をはるかに上回るものでありました(2) 。フランスでは、他の国々と同様にPIDの過小診断や誤診が依然として大きな問題となっているようです。

フランスでよくみられる主なPIDは、抗体不全症であります。このような不全症は、たとえば抗体を作る Bリンパ球が成熟せずに、IgAなどを産生する形質細胞にならなかった場合に起こます。このほかのB細胞不全は内因性B細胞欠損、たとえば遺伝子の欠失によると考えられます。

B細胞の成熟に必要な分子が欠損、あるいは不足している場合に、血液、脾臓、リンパ節、腸または骨髄において成熟したB細胞または形質細胞が存在しなくなり抗体ができません。X連鎖無γグロブリン血症もB細胞の成熟に必須の分子の欠損によって発症します。

治療せずに放置すると、PID患者さんは小児でも成人でも感染症などの合併症を発症し、早死に至ることがあります。幸いPIDに有効な治療法があり、早期に治療を行えば救命でき、合併症を防ぎ、QOLを向上させます。多くの症例において簡単な遺伝子スクリーニングでPIDの確定診断をすることができ、その結果、適切な治療を行うことができます。PIDの診断を受けるため、またPIDで入院加療が必要な場合には、小児または成人のPID専門病院を利用することができます。フランスには、Necker病院(小児PIDの専門施設)やSaint Louis -Service d’Immunologie Clinique病院(成人PIDの専門施設)などがあります。

抗体不全のPID患者さんに対する最も一般的な治療法は、免疫グロブリン(またはγグロブリン)として知られる抗体を補充する方法であります。γグロブリンはB細胞が産生する抗体で、ウイルス、細菌、真菌などを殺傷します。これらは血管(静脈内)または皮膚の下(皮下)に直接投与されます。免疫グロブリンの皮下投与は投与が容易なため、いくつかのヨーロッパ諸国では自宅で行うことができます。これに対して、免疫グロブリンの静脈内投与は病院で行うことを原則としています。皮下投与による在宅療法によって、定期的に通院する必要性が大幅に減少し、患者さんが学校や仕事を休まなければならない期間が短縮されます。このため、患者さんはそれほど病気や障害があると感じないようになります。X連鎖無γグロブリン血症患者の大半は、皮下投与によってさらに普通の日常生活を送ることができるようになると思われます。

参考文献

1. Guzman D,D Veit,V Knerr,G Kindle,B Gathmann,A M Eades-Perner,B Grimbacher. The ESID Online Database network (http://www.esid.org/)
2. EUPID Consensus Conference Report (Lennart Hammarstrom:Prevalence, Screening and Diagnosis of PIDs in the EU), 2006. (http://www.eupidconference.com/)
3. Centre de Reference Deficits Immunitaires Hereditaires (http://www.ceredih.fr), 2008.

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