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【監修】
富山大学
金兼 弘和先生

静注用グロブリン製剤

免疫グロブリン補充療法の歴史は1952年のBrutonの報告に始まる。当初のグロブリン製剤は筋注用のものしかなく、投与には痛みを伴い、投与量が限られ、血清IgG値が十分に上昇しないため、感染のコントロールは不良であった。1970年代後半から大量投与可能な静注用グロブリン製剤が開発され、十分な血清IgG値が得られるようになり、感染のコントロールが良好となり、無または低ガンマグロブリン血症の患者も健常者と変わらぬ生活を送ることができるようになった。

静注用グロブリン製剤による定期補充療法は200~600mg/kgを3~4週毎に投与し、投与直前の血清IgG値(トラフ値)を少なくとも500mg/dL以上に保つようにする。しかし症例によって必要な投与量は異なり、目標とするトラフ値も異なるので注意が必要である。発熱、咳嗽などの臨床症状がほとんど見られなくなり、CRP値などの炎症反応が正常化することを目指してトラフ値にとらわれずに、個々に投与量を設定する。メタアナリシスの解析結果からは、肺炎を健常人レベルに予防するためにはトラフ値が1000mg/dL以上必要であり、近年欧米ではより高いトラフ値(700~900mg/dL以上)が設定されている。

実際の補充にあたっては製剤による効果の差はほとんどないので、副作用がない限り製剤の変更はあまり行わない。副作用を軽減するためには投与速度が重要であり、最初の30分は0.01~0.02ml/kgでゆっくりと投与し、その後は2~3倍にスピードアップしても構わない。2回目以降は前回に問題なかった投与速度から開始することも可能である。許容される投与速度は個人差が大きい。それでも悪寒などの副作用を認める場合にはヒドロキシジン(~1mg/kg)やヒドロコルチゾン(~5mg/kg)などの前処置を行ってから投与するとよい。

皮下注用グロブリン製剤

静注用グロブリン製剤による定期補充療法がわが国ではほとんどの無または低ガンマグロブリン血症の患者に対して行われているが、北欧やイギリスを中心に1990年代から皮下注用グロブリン製剤が広く使われるようになり、2000年過ぎから世界中で使われるようになった。それから10年以上遅れてわが国でもようやく皮下注用グロブリン製剤が保険適応となった。皮下注用グロブリン製剤は投与量が限られることから、原則約100mg/kgを週1回投与する必要性がある。しかし体内の血清IgGが安定していることが特徴であり、静注用グロブリン製剤と同じ投与量を分割投与すると最終的なトラフ値が高くなる傾向がある。また静注性グロブリン製剤では投与直後に急激な血清IgG値の上昇を反映して、頭痛などの副作用を認めることがあるが、皮下注用グロブリン製剤ではそのような副作用はあまり見られない。また静脈確保が難しい患者に対しても投与は容易であり、トレーニングを積めば患者や家族自身が投与することもでき、在宅での皮下注も保険適応となっている。

前述の長所だけでなく、もちろん短所もある。出血傾向のある患者にたいしては禁忌である。注射局所の腫脹、痛み、発赤、硬結、痒みは9割程度の患者でみられる。しかしこの局所の副反応は投与機会とともに出現頻度や程度が改善するのでそれほど大きな問題ではない。また皮下に投与できる製剤量に限りがあるので、感染コントロールが不良で大量にグロブリン製剤を必要とする患者には不向きである。

皮下注用グロブリン製剤の最も大きな利点は自分自身が在宅で投与可能なことであり、患者の生活の質を向上させ、病院受診のために学校や会社を休む回数が少なくなり、経済的損失も少なくなる。

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