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CD40リガンド欠損症

【監修】
防衛医科大学校
野々山 恵章先生

対象疾患の原理

高IgM症候群は、血清中のIgG、IgAが低下する一方、IgMは正常ないし高値を示す免疫不全症である。免疫グロブリンのクラススイッチに障害があり、B細胞が、IgMは産生できるが、IgG、IgA、IgEを産生できないことが基本病因である。なお、クラススイッチとは、ガンマグロブリン(抗体)にはIgM、IgD、IgG、IgA、IgD、IgEの5種類のクラスがあるが、IgMから他のクラスの抗体になり、機能が変換し多様化する機構のことである。
高IgM症候群は大きく二つのタイプに分けられる。一つは液性免疫の低下が主体のもので、AID欠損、UNG欠損症がそれにあたる。もう一つが、液性免疫の低下に加え、細胞性免疫の低下を伴うもので、CD40 ligand欠損症、CD40欠損症がそれにあたる。
X連鎖高IgM症候群は、CD40 ligand(CD154)欠損症のことである。原因遺伝子であるCD40 ligandがX染色体上にあるため、X連鎖と称する。伴性劣性遺伝の先天性免疫不全症である。
CD40 ligandは、B細胞のCD40に結合し、サイトカインの刺激とともに、免疫グロブリンのクラススイッチを誘導する分子である。これが欠損しているため、B細胞はクラススイッチできず、IgG、IgAが産生できない。
また、CD40 ligandは樹状細胞のCD40を刺激しIL-12産生を誘導する。IL-12はTh1細胞への機能的成熟を誘導するが、CD40 ligand欠損症では、この経路が障害されるため、T細胞機能障害がおきる。

特徴・症状

低ガンマグロブリン血症の症状

抗体産生不全による症状は、高IgM症候群すべてで認められる。症候としては、抗体(IgG、IgA)欠乏による易感染性である。すなわち、化膿菌感染の重症化がみられ、上気道、下気道感染、膿皮症、中耳炎、化膿性リンパ節炎、大腸菌性腸炎、敗血症などに反復罹患する。親和性が高く、中和抗体、オプソニン抗体のほとんどが属するIgGや、局所免疫で重要な働きをしているIgAが欠如しているため、IgMだけでは代償できず、IgMが正常ないし高値であっても、感染防御に破綻をきたすためと考えられる。
なお、X連鎖高IgM症候群では、IgMが高値を取らない場合もあるので、注意が必要である。IgMは反復感染による上昇であり、感染を繰り返していない場合や、γ-グロブリン製剤を定期的に補充して抗体産生不全による感染症がコントロールされている場合はIgMが上昇しない場合がある。

T細胞機能不全の症状

カリーニ肺炎、クリプトスポリジウムによる重症下痢、真菌感染、ウイルス感染、結核感染などの易感染性が起きる。

好中球減少症

好中球減少を伴うことが約50%程度で見られる。肺炎、中耳炎を繰り返したり、重篤な口内炎を繰り返すこともある。

診断

CD40 ligandの発現をFACSでみる。PMA+Ca ionophoreなどでT細胞を刺激する必要があるので、研究室レベルでの検査となる。当科で可能である。
また、CD40 ligand遺伝子解析も行う。PIDJを通じて登録すれば、遺伝子解析は可能である。

治療法

感染予防

バクタを予防内服する。カリーニ肺炎の予防のために必須である。肝障害、好中球減少、皮疹が出ることがあるので、定期的な診察と血液検査を行う。
クリプトスポリジウム感染は生水やペットなどから感染するので、煮沸した水を飲む。またペットや動物との接触に注意する。プールの水や温泉の湯は汚染されている可能性があるので、飲用を避ける。またペットボトルの水については、メーカーによってはフィルターを通していない可能性があるので、確認する。
抗真菌剤、抗ウイルス剤の予防投与も考慮する。

ガンマグロブリン定期補充

静注用ガンマグロブリンを3-4週に一回、トラフレベル(最低値)を少なくとも500を保つように投与する。

G-CSF投与

好中球減少がある場合は、500-1,000を維持するようにG-CSFを定期的に投与する。

造血幹細胞移植

本疾患は、長期予後が不良であるため、造血幹細胞移植の適応である。根治することが出来る。一見元気にみえても、感染を繰り返し臓器障害を起こすため、感染を起こす前か、感染症をコントロールしながら造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)を行う。

最新情報・今後の動向

造血幹細胞移植を行い、根治することが重要である。カリーニ肺炎での乳幼児期の死亡や、持続感染を抱えての造血幹細胞移植の成績が不良であることから、早期診断、早期治療が最も重要である。

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