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DNA ligase IV 欠損症

【監修】
北海道大学
山田 雅文先生

はじめに

DNA ligase IV欠損症は、DNA ligase IVをコードするLIG4遺伝子の変異によって生じる稀な原発性免疫不全症である。LIG4は13番染色体長腕 (13q33-34) 上に存在し、常染色体劣性遺伝形式をとる。

疾患の原理

DNAの障害は、紫外線、X線照射や薬剤投与の際だけでなく、リンパ球の成熟過程などの生理的な現象の中でも起きており、DNA障害の種類や程度に応じた適切な修復機構が働く必要がある。このなかでもDNA二本鎖切断は極めて重大なDNA障害である。これはX線照射で引き起こされるが、T細胞やB細胞の成熟過程でのV(D)J組換えや免疫グロブリンのクラススイッチの際などにも生じている。非相同末端再結合(non-homologous end-joining, NHEJ)はDNA二本鎖切断が生じた際の主な修復機構の一つであり、複数のステップで構成されるが、DNA ligase IVはその最終段階においてDNA切断端同士を結合させる分子である。したがって、DNA ligase IV欠損症においては、X線照射を受けた際やT細胞やB細胞のV(D)J組換えの際に生じるDNA二本鎖切断の修復が障害される。そのために、X線照射を受けると細胞は死に至りやすく(X線感受性)、またT細胞とB細胞のいずれも欠損した複合免疫不全症を呈する。また、DNA修復機構の障害は白血病や悪性リンパ腫などの悪性疾患の発症のリスクを高める。しばしば骨髄低形成がみられるが、この原因は不明である。
マウスにおいてはDNA ligase IVが完全に欠損すると胎児期に死亡してしまうことがわかっている。ヒトにおいても完全欠損例は報告されておらず、不完全な欠損で機能が残存している (hypomorphic mutations) 必要があると考えられている。片方のDNA鎖が完全に欠損した例で重症化する傾向がみられる。

特徴/症状

DNA ligase IV欠損症は小頭症、低身長、特異顔貌、そして免疫不全症を呈する稀な疾患である。V(D)J組換えが障害されるためにリンパ球分画のうちT細胞、B細胞がいずれも欠損するが、NK細胞は存在し、T-B-NK+の複合免疫不全症を呈する。リンパ球だけでなく、種々の血球系が減少する汎血球減少を呈する場合もある。また、多指症、日光過敏症や発達遅延を伴うこともある。X線感受性を呈し、T, B細胞系の悪性疾患を高頻度に合併する。DNA修復異常を有するほかの原発性免疫不全症 (Nijmegen breakage syndromeやSeckel syndromeなど) においても類似した臨床像がみられる。

診断

Nijmegen breakage syndrome、Seckel syndromeなどのDNA修復異常症やDubowitz症候群のように、本疾患と類似した臨床像を呈する疾患があるため、確定診断のためにはLIG4遺伝子変異を確認する必要がある。末梢血リンパ球や線維芽細胞などでX線感受性があることを確認することも重要である。

治療法

長期生存可能な軽症例も存在する。重症例では感染、T, B細胞系の悪性疾患の発症がみられる。
感染については第一に感染予防であり、ST合剤投与やガンマグロブリン補充療法が行われる。感染症を発症した場合にはそれに対する抗菌剤などを投与する。悪性疾患を発症した場合には、X線照射は禁忌である。抗癌剤投与も種々の組織にDNA障害を来す可能性があり、治療薬剤や投与量を慎重に選択する必要がある。
11歳の例でHLA一致同胞から造血幹細胞移植が行われ5年間順調に経過しているという成功例が2007年に報告されている。X線照射を行わずにfludarabinを用いた前処置が行われている。
ただし、造血幹細胞移植のみでは血球系以外の症状の改善は期待できない。

最新情報(今後の動向)

重症例を見極めて造血幹細胞移植を検討すべきであるが、前処置は本疾患ではDNA障害を生じる可能性があり、前処置の強度をできる限り減らした方法の確立が望まれる。

図1 Nonhomologous End-Joining in Mammalian Cells

The Ku70/Ku80 heterodimer forms a hollow ring that preferentially binds to DNA ends. Ku70/Ku80 bound to DNA ends recruits DNA-PKcs, which forms a complex with the Artemis nuclease. DNA-PKcs may tether the ends, while Artemis nucleolytically processes DNA ends prior to joining. The Cernunnos-XLF protein forms complexes with XRCC4, Ligase IV, or XRCC4 and Ligase IV simultaneously.The exact nature of the active complex is currently undefined, but could involve the formation of heteromultimers with XRCC4 or the XRCC4-Ligase IV complex. The final stage of NHEJ is the ligation of DNA ends catalyzed by XRCC4-Ligase IV. Cernunnos-XLF promotes this process in an unknown way.

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