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アルテミス欠損症

【監修】
防衛医科大学校
野々山 恵章先生

対象疾患の原理

Artemis欠損症は、V(D)J組み換え異常によるSCIDの一型である。T細胞レセプター(T cell receptor、TCR)、B細胞レセプター(B cell receptor、BCR、表面免疫グロブリン)は、それぞれのV(D)J領域のDNA組み替え(V(D)J recombination)により、形成される。V(D)J組み替え機構が障害されていると、T細胞とB細胞の発生が障害され、T(-)、B(-)、NK(+) SCIDとなる。 V(D)J組み換えは、ステップ1: DNA二重鎖切断およびヘアピン構造の形成、ステップ2:DNA 二重鎖切断の認識とヘアピン構造の開裂、ステップ3:DNA 修復(切断領域の結合)の3ステップからなる。それぞれのステップに関わる分子異常によるSCID が見いだされている。 Artemis(DCLRE1C、DNA Cross-Link Repair Protein 1Cとも呼ばれる)はエンドヌクレアーゼとして、V(D)J組み替えの中でステップ2のヘアピン構造の開裂と、残存するDNA断端配列の除去に関与している。ヘアピン構造は、V(D)J組み替えが起きる際、Rag1/Rag2によりDNA 断端に導入される塩基であり、ループ状構造をとってDNA断端を守る役割をしている。Artemisは、エンドヌクレアーゼとして、このヘアピン構造を開裂する。また、Artemisはエクソヌクレアーゼとしてヘアピン構造の開裂により生じた断裂部位の残存塩基を切断し平滑末端にする働きもある。 したがって、Artemis欠損症では、TCR、BCRのV(D)J組み替えがヘアピン構造により阻害される事と平滑末端が出来ない事により阻害される。

特徴・症状

SCIDの症状をとる。リンパ球サブセットの解析では、T(-)、B(-)、NK(+)の表現系をとる。細胞性免疫と液性免疫の両者の欠損を生じて重度の免疫不全状態を呈し重症感染症を起こし、治療が行われなければ感染のコントロールができなく致死的になる。造血幹細胞移植の絶対適応である。

診断

Artemisの遺伝子解析を行う。

治療法

造血幹細胞移植を行う。それまでは、感染のコントロールを厳重に行う。

最新情報・今後の動向

  1. 1) TRECによるSCIDのスクリーニング
    TREC(T-cell receptor excision circles)とは、胸腺でのT細胞時に、T細胞受容体(TCR)の遺伝子再構成が起こるが、その際にゲノムDNAから切り出され細胞内に残存する環状DNA(TREC)のことである。新生児換装濾紙血でTRECを測定することでSCID患者のスクリーニングが可能である。Artemis欠損症でもTREC(-)となる。SCIDは早期診断により、感染症に罹患する前に造血幹細胞移植を行えば、ほぼ100%治癒できる疾患であり、スクリーニングはきわめて有用である。アメリカでは、TRECによるSCIDのスクリーニングが開始されている。
  2. 2) 遺伝子治療
    ドナーがいない、感染症がコントロールできない症例では、造血幹細胞移植が出来ない場合があり、Artemis欠損症も遺伝子治療の対象となっている。

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