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JAK3欠損症

【監修】
仙台医療センター
久間木 悟先生

1.JAK3欠損症とは

JAK3欠損症は重症複合疫不全症の約10%を占める稀な疾患です。遺伝形式は常染色体劣性遺伝で、男児のみならず女児にも発症します。この病気のこどもたちは生まれつき免疫系が働かないために乳児期から感染症にかかりやすく、かつ重症化しやすい状態にあります。
どうしてそのようなことが起こるかに関してもう少し詳しく説明いたしますと、患者では免疫系で中心的な役割を果たしているT細胞とナチュラルキラー細胞(NK細胞)がほとんど存在しないことと、侵入してきた病原体に対する抗体を作るB細胞も機能しないことがあげられます。

図1.JAK3欠損症患者リンパ球の障害部位

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ですから、いったん感染症にかかるとどんどん悪くなっていきます。このように患者では生まれつき免疫系が働きませんので、通常の抗生物質や抗真菌剤による治療だけでは良くならず、骨髄移植などの根本的な治療を受けなければ乳児期に亡くなってしまいます。

2.いつ病気が起こってくるのでしょうか

生まれてきたばかりの赤ちゃんは、胎内にいる間に母親から受け取った抗体(IgG)で感染症から守られています。しかしこのIgGも生後2~4ヵ月すると減ってしまい、自分で抗体を作らなければ感染を防げなくなります。しかし患者は自分で抗体を作ることができないため、母親由来のIgGが底をつく頃から慢性の下痢、間質性肺炎、持続性カンジダ症などの重い感染症を繰り返すようになります。健康な人では問題とならないようなアスペルギルス、カリニなどの毒力の弱い病原体やBCGを含めた生ワクチン株による感染症も起こしてきます。

3.病気はなぜおこってくるのでしょうか

JAK3欠損症は19番染色体に位置するJAK3遺伝子の異常で起こってきます。JAK3はチロシンキナーゼと呼ばれる蛋白で細胞の中に存在し、X-連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)の原因遺伝子IL2RGから作られるγc鎖と1対1で会合します。

図2.γc鎖/JAK3を介したシグナル伝達

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JAK3に異常があるとγc鎖が受け取ったシグナルを細胞内へ伝えることができなくなるためX-SCIDと似た臨床症状を呈します。X-SCID の項でも説明しましたが、γc鎖は、リンパ球の発生・分化・機能に大きな影響を及ぼすインターロイキンを細胞の表面で受け取る受容体で、細胞の中へシグナルを伝える働きを持っています。そのシグナルを細胞内で直接受け取るのがJAK3です。JAK3が機能しない場合にはインターロイキンの作用が細胞内へ伝わりません。その結果γc鎖を受容体として使用しているインターロイキン-2(IL-2)、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21の6種類のインターロイキンすべてのシグナルが伝わらなくなり、重い免疫不全状態となります。これらのインターロイキンのうちT細胞の発生にIL-7が、NK細胞の発生にIL-15が重要な役割を果たしていることがわかってきました。
また、B細胞の抗体産生にはIL-4とIL-21からのシグナルが深く関与していると考えられています。

4.検査結果の特徴

JAK3欠損症患者ではリンパ球数が少ないことが多く、特にT細胞、NK細胞が血液中にほとんど認められません。また、T細胞が作られる場である胸腺は小さく、胸腺から出てきたばかりのT細胞中に存在するT細胞受容体切除サークル(TRECs)は検出されません。「重症複合免疫不全症患者ではTRECsが検出されない」ということを応用して米国でマススクリーニングが開始されました。最近の研究では、新生児期に診断がつき早期に移植を行なった患者ほど予後が良いことが示され、このマススクリーニングが注目されています。
また、患者ではB細胞が存在しても抗体を作ることができません。生直後は母親由来のIgGがあるため、患者でも見かけ上IgG値が正常値を示すことがあります。しかしIgMやIgAは低値のことが多く2~4ヵ月経つとIgG値も低値となってしまいます。
なかには母親由来のT細胞が血液中に存在するために診断が難しい症例もあります。

これまでにJAK3変異が40種類以上報告されています。http://bioinf.uta.fi/JAK3base/

5.治療法について

JAK3欠損症に対する根本的な治療法として骨髄移植、臍帯血移植などの造血幹細胞移植が行なわれています。
一般的に造血幹細胞移植では移植前処置といって抗癌剤や放射線で患者の骨髄を破壊する処置を行なってから造血幹細胞を移植します。

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そうしないとドナーの造血幹細胞は骨髄に着くことができません。しかし、JAK3欠損症患者では生まれつき免疫が働かないため、移植された細胞が排除されにくいという特徴があります。このため組織適合抗原であるHLAの一致した同胞から造血幹細胞を移植する場合には、前処置無しでそのまま入れても造血幹細胞が骨髄に着くのです。しかし、HLAの合う兄弟がいない場合には造血幹細胞は着きにくく、約半数の患者で生涯にわたって免疫グロブリンを入れ続ける必要が出てきます。さらに前処置無しでは長期的にT前駆細胞もやがて枯渇し、再び免疫不全の状態に陥ってしまう可能性も指摘されています。一方、患者は移植前から重い感染症にかかっていることが多いため、骨髄を破壊するような強い前処置を行えば感染症が悪化し生命が危機に曝される可能性があります。これらの問題点を克服するために最近骨髄非破壊的移植と呼ばれる移植法が行なわれるようになってきました。

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この移植法は従来のものに比べて用いる抗癌剤や放射線の量が少ないため副作用の発現率が低くなることが期待されています。現在、日本でも厚生労働省原発性免疫不全症班会議のメンバーが中心となり、この新しい造血幹細胞移植法について検討を行なっているところです。
(http://pidj.rcai.riken.jp/medical_guideline100625.html)

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