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周期性好中球減少症

【監修】
広島大学
小林 正夫先生

原理

約21日周期で好中球が減少する遺伝性疾患である。典型例では好中球減少期に好中球絶対数は100/µL未満となり、同時期に一致して発熱、全身倦怠感、口内炎、皮膚感染、上気道感染などを反復し、3~5日で回復する。好中球減少時には単球増加を認め、両者が相反した周期を示す特徴がある。

診断

周期的に発熱、口内炎、全身倦怠感を訴えるような場合には念頭におく必要がある。好中球減少時の感染症のほとんどは数日以内で好中球の増加に伴い自然軽快するので、血液検査がなされない場合には単なる感染症として放置されることが多い。この理由から本疾患の診断年齢は不定であり、早い場合は幼児期前半、遅い場合には20~30歳を越えてから診断される例がある。乳児期早期に診断される重症先天性好中球減少症とは大きな差異がある。臨床的に周期性好中球減少症を診断するには週1回の末梢血液検査を数週連続で検査することである。この間の白血球数、好中球数、単球数の推移から本症を推測することが可能である。本疾患はほぼ全例で好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE)の変異が認められるので、臨床的に疑う場合には遺伝子検査により確定診断が可能である。骨髄像は周期によって骨髄系細胞の所見が異なってくるので、骨髄像から診断へのアプローチには注意が必要である。本症はELANE遺伝子のヘテロ接合性変異で常染色体性優性の遺伝形式をとる。約1/3の症例で家族歴を有している。時に発端者から診断が拡がる家系例も認められている。

臨床経過と治療法

21日周期で好中球減少が起こるので、その時期に一致して発熱、口内炎、全身倦怠感等の症状が繰り返される。しかし、好中球減少は認められても、症状の出現は必ずしも3週間隔ではない場合もある。多くは一時的な症状として自然軽快するが、時に重症咽頭扁桃炎、肺炎、敗血症に進展することがあるので、この場合には適切な抗菌薬による治療が必要である。好中球減少時期をある程度推測することが可能であれば、ST合剤を好中球減少前から1週間内服させることは有効である。一部の症例では好中球減少期間に応じてG-CSFを投与する場合がある。血液検査上では臨床症状の有無にかかわらず好中球減少時にはCRPの上昇を認めることが多い。また多くの症例で高ガンマグロブリン血症がある。
臨床的に問題となるのは慢性歯肉炎である。好中球減少が定期的出現することからその時期には歯肉の発赤、腫脹が認められ、一時的には改善するが慢性的な歯肉腫脹と発赤に繋がる場合が多い。また口内炎の頻度も多いことから、歯科との連携での口腔ケアは大切である。
欧米の登録事業で多くの症例が観察されているが、SCNと異なりG-CSFを慢性的に必要とすることは少ない。本症からMDS/AMLに移行した症例はわずか1例が報告されているのみであり、一般的に本疾患がMDS/AMLに移行することは考えにくい。造血幹細胞移植が必要となる症例はない。

最新情報

本疾患の責任遺伝子、ELANE変異は重症先天性好中球減少症の約60%にも認める。周期性の場合にはほとんどがエクソン4、5に集中しているが、SCNでは全エクソンにまたがっている。一部の症例では同じ遺伝子変異でありながら、表現型が周期性好中球減少症と重症先天性好中球減少症と異なった病気を示すが、その病因についてはほとんど解明されていない。
好中球エラスターゼ(NE)を代表とする好中球顆粒酵素はゴルジ装置で産生され細胞内から細胞膜を経由して顆粒内へと移行する。この蛋白輸送にはadaptor protein群が輸送蛋白としての役割をしている。この輸送蛋白の欠損や異常によりリソゾームや細胞内顆粒の形成が不完全となり全身諸蔵器の障害が誘導される。正常ELANEは核内でZnフィンガー転写抑制因子であるGFI1の制御下で転写後、ゴルジ装置に配置される。NEの大部分はC末端が切断されadaptor protein complex 3 (AP3)と結合し、顆粒内へと輸送されるが、一部のC末端が切断されないNEではAP3との結合が阻害されるために細胞膜へ移動して結合する。このようにNEの輸送が細胞膜に偏る場合には重症先天性好中球減少症を引き起こし、顆粒内に偏ると周期性好中球減少となる可能性が示唆されている。顆粒内異常に集積したNEがどのように周期性好中球減少症の病態あるいは21日周期と関係しているのか、今後の検討課題である。

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