HOME > PID知識の箱 > 真菌易感染症・慢性粘膜皮膚カンジタ症(CMC)

真菌易感染症・慢性粘膜皮膚カンジタ症(CMC)

【監修】
北海道大学
山田 雅文先生

はじめに

慢性皮膚粘膜カンジダ症 (CMC)は皮膚、爪、粘膜などの再発性、難治性カンジダ感染を特徴とする原発性免疫不全症である。散在性のものと遺伝性のものがあり、遺伝性のものには常染色体劣性遺伝のものと常染色体優性遺伝のものがある。これらにはさらには内分泌異常を合併するものとしないものがあり、様々な原因でCMCを発症する (heterogeneous) と考えられる。
原因不明のものが多いが、最近になって原因遺伝子が特定されたものや、CMC発症のメカニズムが明らかになってきたものがある。

疾患の原理

CMCの原因遺伝子は様々であり、CMCの発症についても種々のレベルでの障害が原因と考えられるが、最近の研究結果からヘルパーT細胞 (Th) の一つであるTh17細胞の異常の関与が示唆されている。
原因の特定されたCMCとしては、AIRE遺伝子変異によるものがまずあげられる。これは自己免疫性多内分泌腺症-カンジダ症-外胚葉ジストロフィー(autoimmune polyendocrinopathy- candidiasis-ectodermal dystrophy; APECED) あるいは自己免疫性多内分泌腺症1型(autoimmune polyendocrinopathy type 1: APS type 1) と呼ばれている (“自己免疫を伴う免疫不全症”参照)。本疾患においては、Th17細胞が産生する種々のサイトカイン (Th17関連サイトカイン) の低下がみられる。またこれらのサイトカインに対する中和抗体産生がCMC発症に関与している可能性が最近報告された。
AIRE以外の原因としては、カンジダなどの真菌を構成するβ-D-グルカンが結合する食細胞上の受容体である“Dectin-1”の異常と、そこからのシグナルを受けてIL-6などの炎症性サイトカインを産生するのに重要な”CARD9”の異常が最近報告された。これらの分子の異常では、カンジダ感染時のIL-6産生障害によりTh17細胞への分化誘導がなされないことがCMC発症につながると考えられる。
しかし、これらの遺伝子の異常で説明できるCMCは全体の一部であり、原因不明のCMCが依然として多い。
甲状腺機能低下症を合併し常染色体優性遺伝形式をとるCMCの一群が存在し、2番染色体短腕 (2p) に原因遺伝子が存在することが報告されているが、特定されておらず、CMCと内分泌異常の発症メカニズムは不明である。

特徴/症状

皮膚、爪、粘膜などの再発性、難治性カンジダ感染を特徴とし、全身感染は通常きたさない。粘膜病変としては口内(鵞口瘡)だけでなく、食道を含む消化管に高度のカンジダ感染症を伴うこともあり、このような例では胃食道逆流や栄養の吸収障害がみられることがある。内分泌異常を合併するものとしないものがある。
1歳までに発症することが多いが、遅発例や20歳代で発症した例も報告されている。
APECED患者においては、副甲状腺機能低下症や副腎皮質機能低下症など種々の内分泌異常を合併する。これらは免疫寛容の破綻によると考えられており、その他にも1型糖尿病、バセドー病や脱毛症などの自己免疫の関連した疾患を合併しやすい。また外胚葉ジストロフィーも本疾患の特徴であり、永久歯のエナメル質低形成や爪形成不全などを認める。
常染色体優性遺伝のCMCで甲状腺機能低下症を合併するものがある。
カンジダ感染自体では全身感染症は稀なためで死亡率は高くないが、APECED患者では内分泌異常や自己免疫疾患の合併により致死率が高くなる。常染色体優性遺伝のCMCでは、脳の血管炎をきたした例や食道癌を発症した例が報告されている。

診断

基本的には臨床症状からなされる。責任遺伝子の明らかなものについては遺伝子診断が可能である。
高IgE症候群やHIV感染患者でもCMCがみられるため、これらの鑑別も重要である。

治療法

感染予防と感染時の治療が主体で、抗真菌薬の局所、および全身投与が行われる。
内分泌異常を合併した際には各種ホルモン補充療法などの治療も必要になる。

最新情報(今後の動向)

種々の抗真菌薬の開発により感染コントロールが改善してきている。
重症のCMCに対して造血幹細胞移植が成功した例が報告されている。
種々のレベルでの障害が原因と考えられるCMCであるが、発症のメカニズムを個々の症例で明らかにすることにより、症例の病態に沿った治療戦略を立てられるようになることが期待される。

企画・制作:
e-免疫.com運営事務局