HOME > PID知識の箱 > 免疫不全を伴う無汗性外胚葉形成異常症(EDA-ID)

免疫不全を伴う無汗性外胚葉形成異常症(EDA-ID)

【監修】
京都大学
西小森隆太先生 河合朋樹先生 平家俊男先生

原理

外胚葉形成不全をともなう免疫不全症の原因として、これまで2つの遺伝子が報告されており、X染色体劣性遺伝形式のNEMO異常症、常染色体優性遺伝形式のIKBα異常症が知られている。いずれもNF-κB活性化に関わる蛋白で、その異常により各種受容体からのシグナルによるNF-κB活性化の障害をきたす。外胚葉の発生に重要な受容体(Ectodysplasin A receptor)からのシグナル伝達障害により外胚葉形成不全、自然免疫系の炎症に関わる受容体(TNF-α receptor、IL-1 receptor、Toll like receptor)のシグナル伝達障害により易感染性等の症状を伴う。

図1 NEMO, IκBαを介するNF-κB活性化機構

NEMO, IκBαを介するNF-κB活性化機構

1) NEMO異常症による外胚葉形成不全を伴う免疫不全症

特徴・症状

臨床的な特徴としては前述した外胚葉形成不全による発汗の低下、粗な頭髪・眉毛、歯牙萌出不全・欠失・円錐状歯などの症状を伴う。また免疫不全症としては、肺炎球菌等の重症細菌感染症を繰り返し、非定型抗酸菌感染症への易感染性、サイトメガロウイルス・EBウイルス等のヘルペス属感染症の遷延化・重症化、さらに重症例ではニューモシスティス肺炎をともなう。加えて、破骨細胞の分化異常による大理石病、高IgM症候群、VEGFR-3異常によるリンパ浮腫を合併する症例が存在する。また一部の症例に自己免疫疾患様の症状を合併し、関節炎、炎症性腸疾患の合併が指摘されている。
免疫系の検査所見としては、低ガンマグロブリン血症を示すことが多く、一部高IgM血症を示す症例が存在する。肺炎球菌感染症で重要な多糖体に対する抗体産生不全を認め、同種血球凝集素の低下を合併していることがある。またNK活性の低下を合併する。通常T細胞数に異常を認めないが、一部リンパ球増殖試験の低下を認める症例が存在する。以上の症状の頻度を表1に示す。

表1 NEMO異常症における臨床症状・検査データ異常の頻度

臨床症状・検査データ異常 頻度
外胚葉形成不全 77%
大理石病 8%
リンパ浮腫 8%
自己免疫疾患・炎症性疾患 23%
死亡 36%
感染症
  細菌感染症
  抗酸菌感染症
  ニューモシスティス肺炎
98%
86%
44%
8%
高IgM症候群 15%
低ガンマグロブリン血症 59%
高IgA血症 37%
高IgD血症 40%
特異的抗体欠損症 64%
肺炎球菌特異的抗体欠損症 81%
NK活性低下 100%

Hanson EP, J Allergy Clin Immunol 122:1169, 2008

診断

免疫不全症状に加えて、外胚葉形成不全症の合併を認めた場合に本疾患を疑う。ただし、生後早期には外胚葉形成不全症に気づかれないこともあり、低ガンマグロブリン血症、反復性重症細菌感染症、非定型抗酸菌感染症、BCG感染症などの症状があれば鑑別診断すべきである。
末梢血を用いた遺伝子検査、NEMO細胞内染色を用いたNEMフローサイトメトリー検査にて診断可能である。NEMO遺伝子の下流にはほぼ相同な偽遺伝子が存在するため、 ゲノムDNAで解析するときはどちらに変異が入っているかの区別が難しい。cDNAの配列解析を用いたほうが診断は容易である。

治療法

易感染性にたいしては、抗菌薬の予防投薬、ガンマグロブリンの補充療法を考慮する。またST合剤投与によりニューモシスティス肺炎の予防を考慮する。非定型抗酸菌感染症を繰り返す症例は予後不良と言われている。そのような症例では造血幹細胞移植が試みられ、本邦では造血幹細胞施行3例中2例が成功している。

2) IKBα異常症による外胚葉形成不全を伴う免疫不全症

特徴・症状

NEMO異常症に比べ報告例はすくなく、3種類4家系の報告がある。いずれも外胚葉形成不全症をしめし、反復する細菌感染症、下痢、発育不全、重症例ではニューモシスティス肺炎を伴う。免疫系の異常では、低ガンマグロブリン血症を示す症例が多く、一部高IgM血症を示している。またいずれもリンパ球増多を示した。

診断

免疫不全症状に加えて、外胚葉形成不全症の合併を認めた場合に本疾患を疑う。ただし、生後早期には外胚葉形成不全症に気づかれないこともあり、低ガンマグロブリン血症、反復性重症細菌感染症などの症状があれば鑑別疾患対象の1つとなる。末梢血を用いた遺伝子検査により診断を確定する。

治療法

易感染性にたいしては、抗菌薬の予防投薬、ガンマグロブリンの補充療法を考慮する。またST合剤投与によりニューモシスティス肺炎の予防を考慮する。ニューモシスティス肺炎合併例、上記治療で治療に難渋する重症例では造血幹細胞移植の適応である。これまで既報告例では2例中1例で造血幹細胞移植が成功している。

最新情報

NEMO異常症による外胚葉形成不全を伴う免疫不全症において難治性の炎症性腸疾患を合併する症例が報告されており、一部では抗TNF-α製剤が有効であった。
また厚労省の難治性疾患克服研究事業、「外胚葉形成不全免疫不全症の実態調査と治療ガイドラインの作成に関する研究」が組織され、本邦における外胚葉形成不全を伴う免疫不全症の患者QOLの改善が期待される。

企画・制作:
e-免疫.com運営事務局