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高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)

【監修】
京都大学
西小森 隆太先生

原理

高IgD症候群は、主に乳児期に発症する常染色体劣性の自己炎症疾患である。その原因遺伝子は、コレステロール生合成に関わるメバロン酸キナーゼ(MK)をコードするMVK遺伝子であり、これにより酵素活性がほぼ欠損すると重症型のメバロン酸尿症(酵素活性1%未満)、わずかに残存すると軽症型の高IgD症候群(同1-10%)と考えられている。
MKはコレステロール生合成経路でメバロン酸をリン酸化する酵素である。

図1 メバロン酸経路

メバロン酸経路

ゆえに、MK酵素活性が欠乏すると、メバロン酸が蓄積し、健常人ではまず見られない尿中メバロン酸の排泄を認める。従来このメバロン酸の増加が高IgD症候群の病態の原因であると考えられていたが、近年では、ゲラニルゲラニルピロリン酸等の短期的不足が主因と考える実験的報告が主流を占めている。

特徴・症状

高IgD症候群は、オランダなど欧州圏に圧倒的に多く報告されているが、本邦においても2008年より数家系が順次診断されており、決して欧州に偏在した疾患ではない。
乳児期早期より見られる原因不明の炎症反応の高値持続、もしくは周期性発熱が主だった症状として挙げられ、これらはワクチンや外傷、軽微な感冒などにより誘発されることが知られている。この発熱発作に併発する症状として、皮疹、腹部症状、関節症状、リンパ節腫脹、口腔内アフタなどが存在する。肝機能異常を早期より伴った報告もある。

診断

まず急性感染症等の除外が必要となるが、急性期を過ぎても炎症反応が陰性化しない場合や、幾度か発作を繰り返す状況で本疾患の可能性を念頭に置く。血液検査では、発熱発作時に白血球数、CRPは著明高値となり、発熱間欠期にもCRPが陰性化しない症例も多い。病名により誤解を受けがちであるが、血清IgD値は年齢と共に上昇してくることが知られており、乳児期発症の本疾患では当初正常であることが多く、除外診断にはまったく有用でない。
本疾患の診断に有用な特異的検査としては、発熱時の尿中メバロン酸測定、MK酵素活性測定、MVK遺伝子解析が挙げられる。
いずれも現時点では一般施設ですぐに実施可能な検査ではないが、冷凍保存しておいた尿や末梢血の送付により測定が可能である。本疾患の診断のフローチャートを図2に示す。

図2 HIDSの診断フローチャート

※ 乳児期早期からの不明な炎症反応高値、不明熱、皮疹や腹部症状、関節症状などを伴うことがある。
(乳児期発症のJIA、再発を繰り返す川崎病などの診断で長期フォロー中の患者も含む)

HIDSの診断フローチャート

治療法

本疾患での具体的治療指針は未だ定まっていないが、発作時の副腎皮質ホルモンの短期的全身投与が多くの症例で有効とされている。
HMG-CoA還元酵素の阻害薬であるスタチンに関しても、限定的ではあるが有効性が指摘されており、まず考慮する治療となり得る。
生物学的製剤の中では、抗IL-1製剤であるアナキンラや、抗TNFα製剤であるエタネルセプトの有効性が症例報告されており、ステロイド使用量を減ずる目的で考慮され得る。最重症例では骨髄移植もみられ成功している。

最新情報(今後の動向)

本疾患のMK欠乏から自己炎症疾患を来たす病態に関してはまだまだ不明な部分が多く、手探りでの治療になるのは否めないが、ゲラニルゲラニルピロリン酸の不足が炎症症状を引き起こすことが注目されており、これが確かめられれば、その前駆物質であるゲラニルゲラニオールの補充も治療方針の一つとして有用になると考えられる。

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