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TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)

【監修】
九州大学
高田 英俊先生

自己炎症性疾患(autoinflammatory disease)は近年提唱された疾患概念である。1999年にMcDermottらによってTNF receptor-associated periodic syndrome(TRPS)の原因が解明されたことがこの自己炎症性疾患という概念が提唱される契機となった1)。即ち、自己炎症性疾患とは臨床的には発熱や関節症状などを主体とするが、特定の病原体や抗原が関与しない。好中球や単球/マクロファージなど自然免疫系の機能亢進がみられ、CRPやAAアミロイドなど非特異的な炎症所見を伴う。自己炎症性疾患には遺伝的背景が明確なものと明確でないものがある。TRAPSは自己炎症性疾患の代表的疾患であり、常染色体優性遺伝形式をとる。

TRAPSの病因

TRAPSはfamilial Hibernian feverとも呼ばれ、TNF receptor 1(TNFR1)遺伝子(TNFRSF1A)のミスセンス変異による常染色体優性遺伝形式をとる自己炎症性疾患である1)。TNFR1はtrimerとしてほとんどすべての細胞表面に発現している。TNF-αとの結合により細胞内にシグナルが伝達され、接着分子の発現亢進がおこり、proinflammatory cytokineが産生され、炎症が惹起される。

図1. TNF R1からのシグナル伝達機構

TNF-α3量体は、3量体構造をとったTNFR1と結合することにより細胞内のシグナル伝達が始まる。NF-κBやc-Jun(not shown)などの転写因子が活性化しsurvival pathwayにより炎症を惹起する。同時にTNFR1からのシグナルはCaspase経路を活性化し、apoptosis pathwayも活性化する。

同時に、TNFR1のシグナル伝達によりmetalloproteaseがTNFR1の細胞外ドメインを細胞膜近傍で切断する。このことによりTNFR1からのシグナル伝達が持続しない状態になり、さらに切断されたTNFR1の細胞外ドメインはTNF-αと結合し、TNFR1の機能をblockする。TRAPS患者では、TNFR1の遺伝子異常によりこのTNFR1の切断が起こらないことによって、TNFR1のシグナルが過剰に伝達されることが原因であると考えられている(shedding hypothesis)。

図2. TRASの1病態

正常(上段)では、TNF-αの結合により炎症性シグナルが細胞内に伝達されるとともに、proteaseの活性化がおこり、細胞表面からTNFR1が切断される。これによりTNFR1からのシグナル伝達が抑制される。また切断されたTNFR1はTNF-αと結合し、TNF-αの作用を抑制する。一部のTRAPS患者では(下段)、TNFR1遺伝子変異によりproteaseの切断が起こらないため、TNFR1からのシグナル伝達が持続し、炎症が惹起される。

しかし、遺伝子変異によっては、これ以外のメカニズム、即ち、TNFR1の細胞内traffickingの異常、TNF-αとのaffinityの低下、TNFR1刺激による細胞のアポトーシスの低下、NF-κBの異常活性化などが原因となっている。最近では異常なTNFR1分子が小包体内にretentionしてしまうことが炎症を惹起する原因ではないかとも報告されている2)。最近、TRAPS患者と同じTNFR1遺伝子のミスセンス変異をheterozygousに導入したマウスでは細胞質内にTNFR1遺伝子が蓄積され、TNF-α非依存性にJNKやp38の活性化を起こすことが明らかになった3)
他方、TRAPSの家系内で同一のTNFR1遺伝子変異があるにもかかわらず無症状である例もあり、その機序はまだ解明されていない。
逆に、臨床的にはTRAPSと診断されるがTNFR1遺伝子に異常が認められない例も報告されているがその原因は解明されていない。

TRAPSの臨床像

発症年齢は平均10歳であるが、1歳から63歳までの幅があると報告されている4)。周期的な発熱がみられるが、他の周期性発熱症候群よりも発熱期間が長く、平均14日である(2日から56日)5)

図3. 代表的自己炎症性疾患の熱型

A: 家族性地中海熱
発熱は月1回程度であり、発熱持続期間は数日以内のことが多く、発熱時に漿膜炎、嘔吐、関節炎、丹毒様皮疹を伴うこともある。
B: 高IgD症候群
発熱は月1回程度であり、発熱持続期間は1週間前後であり、発熱時にリンパ節腫大、紅斑、腹痛、嘔吐、関節痛などを伴うことがある。
C: TRAPS
数か月~数年に1回程度発熱がみられ、発熱持続期間は14日前後と長い。発熱時に毛悦膜炎、丹毒用皮疹、筋肉痛、関節痛、腹痛などを伴う。

発熱発作間のインターバルは数か月から数年と幅がある。発熱発作を誘発する因子としては、運動、ウイルス感染症、外傷、飲酒などが知られている。発熱時に腹痛を伴う頻度は高く77%である。誤って外科的処置を受けている例もある。筋肉痛は64%でみられる。多くは1か所の痛みに限られており圧痛を伴い、その部位に紅斑を伴う。局所のMRIや生検では、組織球の浸潤を伴う筋膜炎やリンパ球浸潤を伴う血管炎が主体である。皮疹は55%に認められ、紅斑性あるいは丹毒様と表現されることが多いが、蕁麻疹様のこともある。眼症状は49%にみられ、片側性の眼瞼周囲の浮腫、結膜炎やぶどう膜炎が多い。まれに上強膜炎、眼窩蜂巣炎もみられる。関節痛や関節炎は51%にみられ、胸膜炎は49%にみられている。心外膜炎も報告されている。そのほか、咽頭炎、扁桃炎、頸部リンパ節炎、下痢などの報告もある。中枢神経系の症状としては、視神経炎、行動異常、鬱などが記載されているが、MRIで脱髄性変化が確認された例もある。しかし、投与されている薬剤の副作用である可能性もあり、関連は明確ではない。
長期的な炎症が持続すれば全身性のアミロイドーシスを発症する。

TRAPSの治療

ステロイドは発熱発作時に有効であるが、次第に増量が必要となることが多く、ステロイドの副作用が避けられなくなる。
この疾患に対してはTNFR2:Fc fusion蛋白であるEtanerceptが有効である。成人では25mgを週2回が標準的である。小児では1回量は0.4mg/kgである。この薬剤は結核などの感染症等、副作用に充分注意して使用されなければならない。次第に効果が減弱し、他の治療を併用する必要がある例もある。
コルヒチンは発熱発作の予防に関して有効例があることも確認されているが、有効率は21%と低い。Sirolimusについても有効例が報告されており、AnakinraはEtanercept無効例に有効であったと報告されている。
EtanerceptあるいはEtanerceptとコルヒチンやステロイドなどを組み合わせることで、アミロイドーシスの発症を予防することが治療上重要な点である。

参考文献

  1. 1. McDermott MF, Aksentijevich I, Galon J, et al. Germline mutations in the extracellular domains of the 55 kDa TNF receptor, TNFR1, define a family of dominantly inherited autoinflammatory syndromes. Cell 97:133-44, 1999
  2. 2. Lobito AA, Kimberley FC, Muppidi JR, et al. Abnormal disulfide-linked oligomerization results in ER retention and altererd signaling by TNFR1 mutants in TNFR1-associated periodic fever syndrome (TRAPS). Blood 108:1320-7, 2006
  3. 3. Simon A, Park H, Maddipati R, Lobito AA, Bulua AC, Jackson AJ, Chae JJ, Ettinger R, de Koning HD, Cruz AC, Kastner DL, Komarow H, Siegel RM. Concerted action of wild-type and mutant TNF receptors enhances inflammation in TNF receptor 1-associated periodic fever syndrome. Proc Natl Acad Sci U S A. 107:9801-6, 2010
  4. 4.Stojanov S and McDermott MF. The tumour necrosis factor receptor-associated periodic syndrome: current concepts. Expert Rev Mol Med 7: 1-18, 2005
  5. 5.Drenth JP, van der Meer JW. Hereditary periodic fever. N Engl J Med 345:1748-57, 2001
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