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家族性地中海熱

【監修】
信州大学
上松 一永先生

概要

月に1回ほどの発熱を繰り返し起こしている人はいないだろうか?発熱期間は数日以内で、発熱に伴って激しいお腹か胸の痛みがあります。発熱時には、お医者さんで血液検査をして炎症があるかどうか調べると、CRP(炎症マーカーです)が10以上と高値になり、驚かれます。発作がないときには、その値は正常化する、といった奇妙な疾患です。これは、炎症をコントロールする物質の異常によって発症する自己炎症疾患の中で代表的な、家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever: FMFと英語の頭文字をとって略します)の典型的な症状です。また、最近では、家族性地中海熱の非典型例があることがわかり、この場合は、発熱が1週間くらい続き、関節の痛み、お腹の症状、などを伴います。

原理

免疫疾患の主な疾患として、免疫不全症、アレルギー、自己免疫疾患(膠原病)がありますが、自己炎症疾患は、炎症が持続したり反復する病気で、多種多様なものがあり、感染症、癌、自己免疫疾患などは除外されます。炎症を繰り返しますが、ばい菌、癌、自分を攻撃する免疫の異常などはありません。この病気を起こす原因の遺伝子が異常であることがわかってきています。

特徴・症状

家族性地中海熱の発症年齢は5歳から20歳が多いですが、幼児期に徴候がみられることがあります。また、おとなで発症することがあります。全国には300人ほど存在すると推定しています。
症状は、突然高熱を認め、典型例では半日から3日間持続します。発熱期間が短いことが特徴ですが、発熱期間中は動けなくなり、ベットレストを余儀なくされます。また、腹痛は激痛で、胸の痛みは、串でさされたような痛みが特徴的です。腹痛の原因は、好中球が漿膜炎に浸潤しておきます。この膜は、胸、心膜、腹などの体腔の壁の内面、および肺、心臓、腸などに収納されている器官をおおっている薄い膜です。胸痛時には呼吸が浅くなり、全身倦怠感を生じるのが、典型例の特徴です。関節痛を伴うことがあります。
発熱間隔は、2-6週間で4週間毎が多いです。なぜ周期性に発熱するのかは不明ですが、女性患者では約半数が生理時に一致します。腹痛か胸痛のどちらかで同時に起こることは余りありません。腹痛は激痛で盲腸と誤診されやすく、背中の痛みを訴えることもあります。非典型例では、発熱が1週間くらい続き、随伴症状として、いろいろな部位に関節の痛み、激痛ではありませんが腹痛や嘔吐などのお腹の症状、発疹などを伴います。

診断

症状でほぼ診断がつきます。検査では、腹部CT(画像診断)で腹膜の炎症がみられることがあります。検査所見は、IL-6(炎症に関わるサイトカイン)、CRP、血清アミロイドA(CRPの前駆物質)の著明高値を伴うことが多く、間歇期にこれらは劇的に陰性化します。CRPは10-20 mg/mlほどの高値になります。
家族性地中海熱の原因は、パイリンという物質の異常です。この分子は、好中球に発現しています。パイリンは、炎症反応を抑える働きを持っており、その遺伝子異常によって、抑制効果が妨げられていると考えられています。パイリンの遺伝子を調べることによって、確定診断が可能になります。典型例では、この分子の端に変異があり、非典型例では分子の中央に変異があるといった特徴があります。

治療法

一般的にこのような炎症が主体の病気は、炎症をあらゆる面から抑える副腎皮質ホルモン薬が有効ですが、家族性地中海熱では、副腎皮質ステロイド薬に反応しない、効かないといった特徴があります。痛風に使用するコルヒチンが約90%でよく効きます。コルヒチンは成人で、0.5-1.0 mg/日、一日1回から2回の毎日の内服を行い、下痢、嘔吐、腹痛などの副作用が出現した場合は減量します。発作時のみの内服では効果がないため、毎日飲むことが必要です。アミロイドというものが蓄積するアミロイドーシスという病気を合併すると予後不良です。妊婦さんのコルヒチン内服は、影響がないとの報告がありますが、症状の程度や発作による胎児への影響なども考慮した総合的な判断が望まれます。

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