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家族性血球貪食リンパ組織球増多症候群(FHL)

【監修】
京都大学
平家 俊男先生

はじめに

血球貪食症候群/血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic syndrome/hemophagocytic lymphohistiocytosis:HPS/HLH)は、発熱・汎血球減少・肝脾腫・播種性血管内凝固症候群(DIC)を主要徴候とし、組織球の増殖と血球貪食像を病理学的特徴とする症候群であり、遺伝的素因による原発性のものと、感染や膠原病・悪性腫瘍などに続発する2次性のものとに大別される。
臨床経過や一般的検査による両者の鑑別は困難であること、HPS/HLHの急性期は集中管理を要する事が殆どであることなどのため、実際の診療には困難を伴い、死亡例も多い。

血球貪食症候群の病態

HPS/HLHの基本病態は、CD8陽性T細胞を中心とするリンパ球ならびに組織球の異常な活性化と、IFN-γ、IL-1、IL-6、IL-18、Tumor necrosis factorα(TNF-α)など様々なサイトカインの制御不能な過剰産生(サイトカインストーム)である。それを引き起こす原因として、細胞障害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte:CTL)やNK細胞の細胞障害活性(cytolytic activity)低下が考えられている。
CD8陽性T細胞は抗原刺激(ウイルス感染)により活性化されてCTLとなり、NK細胞とともにウィルス感染などに対する免疫応答の中心を担う。
HPS/HLHにおいては、CTLやNK細胞の細胞障害活性(cytolytic activity)が低下するためウイルス感染細胞を効率的に排除できない。そのため、抗原刺激(ウイルス感染)が持続し、過剰な免疫反応を招く。
CTLやNK細胞の細胞障害活性機構の中心は、細胞障害性顆粒(cytolytic granule)の放出による標的細胞へのapoptosis誘導であるが、原発性HPS/HLHの原因の多くがこの経路の障害である事が明らかにされている。

原発性血球貪食症候群の分類

遺伝性のHPS/HLHは、血球貪食症候群を唯一の表現型として発症する家族性血球貪食症候群(familial hemophagocytic lymphohistiocytosis:FHL)と、特定の免疫異常症(白子症を伴う免疫不全症候群、X連鎖リンパ増殖症候群)を背景とし、その表現型の一つとして発症するものとに分類される。
この他にも、原発性免疫不全症候群や先天性代謝異常症に於いてHPS/HLHの合併を認めるが、その頻度は高くなく原因解明も進んでいない。

原発性HPS/HLHの分類

疾患 責任遺伝子 蛋白 機能
FHL1 不明 不明 不明
FHL2 PRF1 Perforin 標的細胞膜の孔形成
FHL3 UNC13D Munc13-4 顆粒のtethering&priming
FHL4 STX11 Syntaxin11 顆粒のfusion
FHL5 STXBP2 Munc18-2 顆粒のfusion?
Chédiak-Higashi Syndrome CHS1/LYST LYST Lysosomeの生成・輸送?
Hermansky-Pudlak
Syndrome ll
AP3B1 AP3
β1 subunit
顆粒のtethering?
Griscelli Syndrome ll RAB27A Rab27a 顆粒のpolarization
XLP1 SH2D1A SAP T/NK細胞の活性化?
XLP2 BIRC4 XIAP 不明

原発性血球貪食症候群の分類

1)家族性血球貪食症候群(FHL)

  • FarquharとClaireauxによりfamilial hemophagocytic reticulosisとして報告されて以来、長らくFHLの原因は不明のままであったが、1999年にFHL2の原因としてperforinが同定され、以後リンパ球の細胞障害顆粒に関連した異常を共通病態とする4病型(FHL2~FHL5)が同定されている。
  • 何れも病型も発症までは無症状であり、HPS/HLHを唯一の表現型とする。
  • 1歳までに70~80%、3歳までにほぼ全例が発症するが、成人での発症例もごく稀に存在する。
  • 本邦に於けるFHL疑い症例の解析では、FHL2とFHL3がそれぞれ約1/3、FHL5が数%(確定2症例)を占め、FHL4の報告はない。
  • 残りの症例の原因は不明である。

FHL1

パキスタン人4家系の解析から、9番染色体長腕(9q21.3-q22)への連鎖が報告されたが、未だに責任遺伝子は同定されておらず、リンパ球の細胞障害活性の低下を伴うかどうかも不明である。
パキスタン人以外のFHL症例ではこの部位への連鎖は確認されていない。

FHL2

FHLの原因分子として最初に同定されたperforinは、補体成分C9と相同性を有する蛋白であり、granzymeやgranulysinと共にCTLやNK細胞の細胞障害性顆粒内に存在する。
活性化したNK細胞やCTLは標的細胞との間に免疫学的シナプス(immunological synapse:IS)を形成して細胞障害性顆粒を開口放出するが、放出されたperforinは重合して標的細胞の細胞膜に挿入され、孔を形成してapoptosisを誘導する。
同時に放出されたgranzymeやgranulysinは、perforinにより形成された孔から標的細胞内に入ってapoptosisの誘導を増強する。
FHL2に於いては、細胞傷害effector分子の異常により細胞障害活性が欠損/低下する事となる。

FHL3・FHL4・FHL5

FHL2の原因はcytolytic activityのeffector分子であるperforinそのものの異常であるが、FHL3の原因としてMunc13-4が同定されて以来、perforinを含む細胞障害性顆粒の脱顆粒障害によっても同様な状態が引き起こされる事が明らかとなっている。細胞障害性顆粒の脱顆粒過程は、①ISへのpolarization、②細胞膜へのtethering(docking)、③膜融合のpriming、④細胞膜とのfusionという段階に大別されるが、この何れかのステップの異常により細胞障害活性が障害される事となる。
FHL3の原因分子であるMunc13-4は、少なくとも②細胞膜へのtetheringと③膜融合のprimingの2段階に関与し、FHL4の原因分子syntaxin-11は、④細胞膜とのfusionに関与していると考えられている。
FHL5の原因として2009年に報告されたMunc18-2は、syntaxin-11と結合してこれを安定化し脱顆粒に関与する事が示されているが、詳細な機能は不明である。

2)その他

A)白子症を伴う免疫不全症候群

白子症(albinism)はメラニン色素の輸送障害によって生じるが、この輸送機構と細胞障害性顆粒の脱顆粒機構に共通点があるため、一部の白子症では細胞障害活性の欠損/低下を伴い、HPS/HLHを合併する。

Chédiak-Higashi syndrome(CHS)

LYST(Lysosomal trafficking regulator)蛋白の異常が原因であり、疾患モデルであるbeigeマウスが存在する。
白子症とHPS/HLHの発症、並びに細胞内巨大顆粒の存在を特徴とし、殆どの症例が幼少期に診断されるが、軽症例は末梢神経障害を主訴に大人になって発見される事もある。
LYST蛋白の機能は解明されていないが、lysosomeの生成や融合・分裂に関与しており、巨大細胞障害性顆粒のISへの輸送は保たれるものの、脱顆粒は障害されている。

Griscelli syndrome, type 2(GS II)

Rab27a蛋白の異常が原因であり、疾患モデルとしてashenマウスが存在する。
Rab27a蛋白はsmall GTPase familyに属し、cytolytic granuleの細胞膜へのtetheringに関与する事が示されている。
MyoVaの異常によるGS I とmelanophilinの異常が原因であるGS IIIではcytolytic activity の低下は認められず、HPS/HLHの合併もない。

Hermansky-Pudlak syndrome, type 2(HPS II)

Hermansky-Pudlak syndromeは、albinismと血小板機能障害による出血傾向を特徴とする症候群である。
現在までに少なくとも8種類の原因分子が特定されており、すべてlysosomeの生成や分泌顆粒の輸送に関与する蛋白である。HPS IIはlysosomeのadaptor蛋白であるAP3のβサブユニットの異常が原因であり、患者CTLではcytolytic granuleのISへのpolarizationが障害され、cytolytic activityの低下が認められる。

B) X連鎖リンパ増殖症候群(X-linked lymphoproliferative disease:XLP)

XLPは別名Duncan病とも呼ばれ、Epstein-Barr virus(EBV)感染に対する異常な免疫応答を特徴とする免疫不全症候群であり、多くはEBVに感染するまでは無症状であるが、感染を契機に様々な免疫異常を呈する。
およそ2/3の症例で劇症型伝染性単核球症(fulminant infectious mononucleosis:FIM)を発症し、その予後は非常に不良である。FIMは、EBV感染B細胞・CTL・マクロファージの異常増殖とサイトカインの過剰産生を基本病態とし、臨床的には重症型のHPS/HLHと考えられる。
その他、低ガンマグロブリン血症や、リンパ腫を含む主にB 細胞性のリンパ増殖性疾患の発症を、それぞれ約1/3の症例で認める。

XLP1

SLAM-associated protein(SAP)の異常を原因とするXLPのプロトタイプである。
特徴として、invariant NKT(iNKT)細胞が欠損/著減している事が知られている。

XLP2

X-linked inhibitor of apoptosis(XIAP)の異常を原因とする。
XLP1と比較して軽症のHPS/HLHを繰り返し、初期から脾腫が認められる事が特徴とされており、これまでリンパ腫の発症報告はない。
当初XLP1と同様にiNKT細胞が欠損/著減していると報告されたが、その後iNKT細胞数は正常であるとの報告もある。

血球貪食症候群の診断

残念ながら、臨床症状や一般検査から原発性と二次性HPS/HLHを鑑別する事は不可能であり、急性期に対する治療を行いつつ、リンパ腫や膠原病など誘因となる疾患や感染(特にEBV)の有無、NK活性などを参考に、確定診断に必要な特殊検査を行う事となる。
EBV陽性のHLH症例でもFHLを否定する事は出来ず、男児例ではXLPの可能性を頭の隅に入れておく必要もある。白子症があれば、CHS・GS II・HPS IIを考える。
最終的な診断確定には遺伝子検査が必要であるが、FHL2~5とXLPに関しては、フローサイトメーターやウェスタンブロット法を用いた蛋白発現解析によるスクリーニングが可能である。
また、NK細胞の脱顆粒機能のスクリーニングも有用である。

血球貪食症候群の診断

血球貪食症候群の治療

血球貪食症候群の治療は次の3つに大別される。

  1. 1)活性化したCD8陽性T細胞、ないし活性化したマクロファージ・組織球を攻撃することにより、過炎症状態を抑制する。
  2. 2)CD8陽性T細胞、ないしマクロファージ・組織球を活性化するトリガーそのものを除去する。
  3. 3)背景に存在する先天性の欠陥を修復する。

原発性血球貪食症候群に対しては主として1)、3)を念頭に置いた治療を、二次性血球貪食症候群に対しては主として1)、2)を選択する。

1. IVIG(免疫グロブリン)

マクロファージのFcレセプターをブロックし、マクロファージの活性を低下させ、間接的にT細胞の活性を低下させることで、サイトカインを低下させる。

2.ステロイド

T細胞に対する殺細胞効果を発揮することで、それらが分泌するサイトカインIL-2やIFNγを抑制する効果、及び活性化マクロファージに働き、それらが分泌するサイトカインTNFα、IL-1、IL-12を抑制する効果を持つ。

3. CyA(シクロスポリン)

主としてT細胞によるIL-2等のサイトカイン産生を阻害することにより、強力な免疫抑制作用を示す。
この産生阻害は、シクロスポリンがカルシニューリンの活性化を阻害することによる。
これによって脱リン酸化による転写因子NFATの細胞質成分の核内移行が阻止され、IL-2やIFNγに代表されるサイトカインの産生が抑制される。
またマクロファージに対してもIL-6、IL-1、TNFα、NO、PGE2の産生を低下させる作用を持つ。

4. VP16

EBL感染細胞及び活性化組織球を攻撃し排除する。
加えてアポトーシスを強力に誘導することから、アポトーシス誘導の欠損が関連している一部の原発性血球貪食症候群、更には単クローン性のリンパ球増殖を示すEBV-HLH、リンパ腫関連HLHに対し特に有効であるとされる。

5. ATG(Anti-Thymocyte Globulin)

細胞表面抗原(CD2, CD3, CD4, CD5, CD7, CD8, CD25, TCRαβ)に対し親和性を示し、またヒトリンパ球細胞傷害性試験において補体存在下にリンパ球を溶解させる。
つまりヒトT細胞表面抗原に結合し、補体依存性の細胞傷害を惹起させることにより、T細胞を減少させる効果を持つ。

6. 抗菌剤、抗ウィルス剤

CD8陽性T細胞、マクロファージ・組織球を活性化するトリガーそのものを除去するのに使用される。

以上をまとめると、① 活性化したCD8陽性T細胞に対しステロイド、CyA・ATGが作用する、② 活性化したマクロファージ・組織球に対しIVIG・ステロイド・CyA・VP16が作用する、③トリガーに対し抗生剤、抗ウィルス剤が作用する、と考えると理解しやすい。
なお、臓器障害やDICを合併する場合、サイトカインを除去するもっとも手早い手段として血漿交換、交換輸血が適用される。

HLH-94

化学療法抵抗性の血球貪食症候群症例(特に原発性)に対する治療戦略として、1994年~1998年に施行されたプロトコールである。
VP16(最初は週2回、その後週1回)とステロイドからなる初期治療に続いて、VP16とステロイドパルスに CyAを併用した継続療法を行い、髄液異常や神経学的所見が陽性の例ではMTX髄注も使用された。
また持続例や再燃例に対しては、同種造血幹細胞移植が施行された。

HLH-94

HLH-2004

HLH-94のコンセプトを継承しつつ、更なる治療成績向上を目的に2004年より新しい治療研究HLH-2004が開始されている。
本邦では2006年日本小児白血病・リンパ腫研究グループ(JPLSG)HLH委員会によりHLH-2004の治療研究が開始された。
HLH-94からの変更点を以下に示す。

a. 初期治療相(1-8週)

HLH-94では治療開始2 ヶ月以内に原疾患により死亡する症例が多かったことからみても、HLH-94より骨髄抑制や免疫抑制などの治療毒性を増やすことなく、最初の2 ヶ月間の治療強化が必要と思われ、以下の2点の変更が加えられた。
①8週間目より投与されていたCyAを初期治療相開始日から使用する。
②担当医判断によりDexa(デキサメサゾン)、CyA2剤で治療を開始することを許容するが、反応不良、あるいは原発性の場合には速やかにVP16の投与を開始する。

b. 継続療法(9週以降)

HLH-94では継続療法早期に死亡した6例の死因は全例原疾患であった。
従って継続療法はあくまで同種造血幹細胞移植までのつなぎの治療と位置づける。
同種造血幹細胞移植を速やかに行うべく、期間が短縮(治療期間は最大で40週まで、計32週間)されている。
継続療法中に、適切なドナーが得られ次第できるだけ速やかに同種造血幹細胞移植を行うこととした。

c. 髄注療法

HLH-94のデータからは髄注の有用性については結論が出ていない。
CNS陽性例の予後は悪い傾向があることから、初診時検査で髄液の異常がみられた例、あるいは神経症状が最初の2週間で進行した例では3週目より1~4回の髄注を実施することとした。

d. 同種造血幹細胞移植

HLH-94の移植の解析では、活動性病変を有する例への移植成績はきわめて不良というわけではなかった。
また治療に対する反応不良例に対する確立された治療が存在しないことから、活動性病変があっても、現時点では移植適応はあると考えられ、HLA一致血縁移植のみならず、非血縁骨髄・臍帯血、HLA不一致ドナーなどを用いた移植も可とした。

同種造血幹細胞移植

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