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自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)

【監修】
金沢大学
谷内江 昭宏先生

原理・病態

 原発性免疫不全症の多くでは、免疫担当細胞の機能異常のため、頻回感染、重症感染、難治性感染など、易感染性の特徴を示します。一方、一部の原発性免疫不全症では免疫制御機構の欠陥により、多様な自己免疫疾患を合併することが知られてきました。その代表例がALPS (autoimmune lymphoproliferative syndrome)です。免疫担当細胞に備わっている重要なしくみの1つに、アポトーシスがあります。抗原に応答して活性化され増殖するリンパ球は、抗原が排除された後には速やかに不活化され、排除される必要があります。アポトーシスは、そのような巧みな免疫制御システムの1つとして機能します。ALPSは、このような免疫系の制御機構の1つであるアポトーシス誘導能が欠損しているために起こる疾患です。自己反応性T細胞、あるいは自己抗体産生B細胞の増殖により、多様な自己免疫疾患を合併することが特徴です。
 最初に記載され、最も良く知られたアポトーシス機構の障害はFas蛋白の異常によるものです。活性化Tリンパ球は細胞表面にFas三量体を発現します。これに活性化Bリンパ球、あるいはTリンパ球表面のFasリガンドが結合することによりアポトーシスシグナルが伝達され、細胞内のカスパーゼ経路が活性化され細胞死が誘導されます(図1)。Fas蛋白のFasリガンドとの結合部、あるいは細胞内のdeath domainに欠損がある場合には、アポトーシスシグナルの伝達が障害され、細胞死が誘導されません)、。その後、このようなFas異常症のみでなく、FasLの異常や、カスパーゼ10の異常)、など、多様な要因により類似の病態が発症することが明らかにされてきました。さらに現在までに、アポトーシス機構に関わるいくつかの原因遺伝子が明らかにされており、基盤となる遺伝子異常により異なる臨床病型に分類されています。表1には、2009年に開催された国際ワークショップで新しく決められた分類を示します

特徴・症状

 ALPSにおける最も特徴的な症状は、持続的なリンパ節腫大、脾腫ならびに肝腫です。ただし、リンパ節腫大や脾腫は多様な急性感染症、あるいはリンパ系悪性腫瘍でしばしば認められる症状であることから、これらの疾患を厳密に除外することが重要です。加えて、自己抗体や自己反応性Tリンパ球増殖による自己免疫疾患の合併が特徴的な症状として認められます)、10)、11。特に、血球系細胞に対する自己抗体が産生されることにより、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、自己免疫性好中球減少症(AIN)などがしばしば見られます。頻度は低くなりますが、腎炎、肝炎、ぶどう膜炎、関節炎など、他の臓器においても自己免疫性の炎症を合併することが知られています。自己免疫病態は主として乳児期に目立ち、成長とともに軽快するものが多いとされていますが、一部の症例では成人してからも多様な自己免疫疾患の合併が認められます。
 ALPSにおける最も重要な合併症は、悪性腫瘍です。悪性リンパ腫などのリンパ系の悪性腫瘍が最も多く見られますが、白血病や他臓器の固形腫瘍の合併も起こることが報告されています。ALPSにおける非ホジキンリンパ腫ならびにホジキンリンパ腫の発症リスクは、対照に比べそれぞれ 14倍、51倍と著明に高いことが知られています。リンパ腫のほとんど全てはB細胞由来であり、発症リスクは加齢とともに増加します12

診 断

 上記に示した特徴的な臨床症状や多様な自己免疫病態の合併に加えて、ALPS症例で特異的に観察されるのが、末梢血中のいわゆる『double negative T細胞』の増加です。TCRαβ鎖を発現する成熟T細胞は、原則としてCD4 抗原あるいは CD8 抗原を発現することが知られています。CD4- CD8- T 細胞はTCRγδ鎖発現T細胞であり、TCRαβ鎖発現 double negative T細胞は正常対照の末梢血中には極めてわずかしか認められません。一方、ALPS患者では特徴的に double negative T細胞の増加が認められ、診断の有力な根拠の1つとなります(図2)。最近は、このような細胞解析所見に加えて、血清IL-10の増加、ビタミンB12の増加、血漿FasLの増加、IgG増加などの診断的価値が高いことがわかってきました13表2には2009年の国際ワークショップで改訂されたALPSの診断基準を示します
 ALPSの病態の本質に関わる、最も有用な検査はin vitroでの Fas誘導アポトーシスの低下です。Fas関連蛋白の異常に基づくALPSであれば、Fasシグナル経路の活性化によるアポトーシスが欠如ないし、著しく低下していることが示されます(図3)14。ただし、NRASの異常など、RAS異常によるALPS関連病態の場合は、Fas経路によるアポトーシスの障害が認められず、IL-2依存性の細胞死を検討する必要があります15。このようなNRAS変異による病態は、必ずしもdouble negative Tリンパ球の増加を伴わず、リンパ節の病理所見が典型的でない、骨髄系の細胞の異常増加を認めるなど、ALPSとしては非典型的な臨床像を呈することから、RAS関連自己免疫性リンパ増殖症(RALD; RAS-associated autoimmune leukoproliferative disease)として別に分類されています。RALDにおいて臨床的に重要な点は、若年性骨髄単球性白血病との関連であり、今後の症例蓄積による検討が必要です。
 ALPSが強く疑われる場合、原因となる候補遺伝子(FAS, FASLG, CASP10, NRAS)の変異が検索されます。最近はこれに加えて、KRASの変異が関与した病態があることが指摘されており、同様に検索対象に加える必要があります16。また、Fas遺伝子の体細胞突然変異によるALPS-sFASの場合は、末梢血中double negative Tリンパ球をソーティングにより選択的に濃縮して遺伝子解析を行う必要があります17)、18。このような診断の過程は、最近の優れた総説にフローチャートとして示されています(図4)

治療・予後

 過剰なリンパ増殖の制御と、合併する自己免疫症状に対する治療が中心となります。リンパ増殖、特に脾腫は脾機能亢進による血球減少の進行や、脾破裂の合併などが摘出術の適応となります。しかし、低年齢時に脾摘をされた症例で、致死的な敗血症を合併した報告があり、慎重な対応が必要です。血球減少症に対しては、ステロイド投与やIVIG療法が試みられます。一部の難治例に対しては、vincristine、azathioprine、methotrexate、cyclophosphamideなどの種々の免疫抑制剤が用いられることもあります。最近はMMF投与やrapamycin投与が有効であることを示唆することも報告されています19)、20
 治療により合併する症状がコントロールされる症例では、生命予後は決して悪くありません。リンパ節腫大や脾腫も加齢とともに軽快することが知られています。したがって、原因遺伝子が確定している症例においても、他の重症複合免疫不全症と異なり、血液幹細胞移植が治療の第1選択となることはありません。ただし、Fas蛋白の完全欠損症例では、生後間もなくより極めて重症の臨床経過を示すことがあり、血液幹細胞移植が施行された例が報告されています。
 ALPSにおける最も重要な合併症はリンパ系の悪性腫瘍であり、その早期診断と治療は重要な課題となります。また、原因不明の自己免疫疾患に悪性リンパ腫を合併した場合には、ALPSおよびALPS関連疾患を鑑別する必要があります。

文 献

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表1 ALPSならびに ALPS関連疾患の分類

従来の分類名 新しい分類名 責任遺伝子 定義
ALPS
ALPS type 0 ALPS-FAS FAS ALPSの診断基準を満たし、胚細胞でFAS遺伝子のホモ変異を認める
ALPS type la ALPS-FAS FAS ALPSの診断基準を満たし、胚細胞でFAS遺伝子のヘテロ変異を認める
ALPS type lm ALPS-sFAS FAS ALPSの診断基準を満たし、体細胞でFAS遺伝子の変異を認める
ALPS type lb ALPS-FASLG FASLG ALPSの診断基準を満たし、胚細胞でFASリカンド遺伝子の変異を認める
ALPS type lla ALPS-CASP10 CASP10 ALPSの診断基準を満たし、胚細胞でカスパーゼ10遺伝子の変異を認める
ALPS type lll ALPS-U 不明 ALPSの診断基準に一致する所見を認めるが、遺伝子変異が同定できない
ALPS 関連疾患
ALPS type llb CEDS CASP8 リンパ節腫大and/or脾腫、DNT微増、反復感染などを示し、胚細胞でcaspase8遺伝子変異を認める
ALPS type IV RALD NRAS 自己免疫、リンパ節腫大and/or脾腫、DNTsは正常/増加、NRASの体細胞変異
DALD DALD 不明 自己免疫、リンパ節腫大and/or脾腫、DNTsは正常、Fas誘導アポトーシスの異常
XLP1 XLP1 SH2D1A 劇症型EBV感染症、低lg血症、リンパ腫

CEDS;caspase 8 deficinecy state, RALD;RAS-associatedd autoimmune leukoproliferative disease,
DALD;Dianzani autoimmune lymphoproliferative disease, XLP1;X-linked lymphoproliferative syndrome

表2 ALPSの診断基準

必須項目

  1. 1.(6ヶ月以上持続する)慢性の、非悪性、非感染性のリンパ節腫脹/脾臓腫大
  2. 2.未梢血リンパ球数が正常ないし増加している場合
    CD3+TCRαβ+CD4-CD8-細胞(DNT;double negative T)細胞が増加(リンパ球の1,5%以上、あるいはCD3+細胞の2,5%以上)

補助項目

一次項目

  1. 1.アポトーシスの障害(2つの異なる方法で証明)
  2. 2.FASFASLGあるいはCASP10遺伝子変異を証明

二次項目

  1. 1.血漿sFAS(>200pg/ml)、血漿IL-10(>20pg/ml)、血清あるいは血漿ビタミンB12(>1500ng/L)あるいは血漿IL-18(>500pg/ml)の増加
  2. 2.熟練した血液病理学者による典型的免疫組織学的所見
  3. 3.自己免疫性血球減少症(溶血性貧血、血小板減少あるいは好中球減少)あるいは多クローン性IgG増加
  4. 4.自己免疫の合併の有無に関わらず非悪性/非感染性リンパ球増殖症の家族歴がある

必須項目を両方とも満たし、一次補助項目の1つを満たせば「診断確定」とする。
必須項目を満たして二次補助項目の1つを満たした場合は「診断疑い」とする。

図1 Fas-FasLを介した細胞アポトーシス誘導

Fas-FasLを介した細胞アポトーシス誘導

図の上部にはFas-FasLを介したアポトーシスに関わる代表的な分子を、図左半は正常なFasシグナル伝達を示す。FasL三量体はFas三量体に結合、これによりFADD (Fas-associated death domain)、Caspase 10あるいはCaspase 8が会合しDISC (death-inducing signaling complex)が形成される。図右半にはALPSの原因遺伝子と臨床分類が記載されている。数字はそれぞれの分類の頻度を示す。図は文献 2)を参考にし、改変して作成した。臨床分類については表1も参照。

図2 末梢血リンパ球解析

末梢血リンパ球解析

TCRαβ+ CD4- CD8- double negative T細胞の増加:典型的なALPS症例(ALPS-FAS)における末梢血DNTの増加を示す。FCMによりCD4-FITC、CD8-FITCならびにTCRαβ-PEにて同時染色したリンパ球のプロフィールを解析。TCRαβ陽性でありながら、CD4、CD8のいずれも発現していない細胞集団(DNT)が著増していることが確認される(赤い枠)。

図3 ALPSにおけるFas誘導アポトーシスの障害

ALPSにおけるFas誘導アポトーシスの障害

ALPSにおけるFas誘導アポトーシスの障害:末梢血単核球を抗Fas抗体で刺激しアポトーシスを誘導した。正常対照では明らかなアポトーシスが誘導されるが、図2で示したALPS-FAS症例ではほとんど細胞死を認めない。

図4 ALPS診断のためのアルゴリズム:文献 8)を改変

ALPS診断のためのアルゴリズム

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