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分類不能型免疫不全症(CVID)-Part2-

【監修】
東京医科歯科大学
森尾 友宏先生

概要

分類不能型免疫不全症は、抗体産生異常を主体とする先天性免疫不全症であるが、症例が多く、多彩な臨床症状を呈し、かつ未だに原因が不明という点から暫定的に分類された疾患群である。10歳以上に発症することが多く、自己免疫疾患や悪性腫瘍などの合併頻度も高い。その原因としてTNF-TNFRファミリー分子やCD19複合体分子の異常が同定されたが、これら以外にも10以上の原因が存在すると推測されている。疾患遺伝子解明への戦略及び根治的治療法の開発が重要である。

背景と定義

  • Common variable immunodeficiency (以下CVID)は、従来分類不能型免疫不全症と翻訳されている。症例数が多く(Common)、多彩な臨床症状をとる(Variable)、分類不能な疾患であるために暫定的につけられた名称であり、それがそのまま用いられており、今後疾患概念が整理されるべきものである。
  • ヨーロッパ免疫不全症学会(European Society of Immunodeficiency : ESID)によれば、「2歳以上(多くは10代以降)で発症する低γグロブリン血症で、同種血球凝集素(血液型試験裏試験)の欠損、あるいはワクチンへの低反応を示し、既知の免疫不全症ではない疾患」と定義されている。
  • 現時点においては基本的には除外診断となっている(除外すべき免疫不全症については「CVIDの診断」の項を参照)。実際に、CVIDと診断された患者の中に(1) X連鎖無γグロブリン血症(X-linked agammaglobulinemia)、(2) 複合免疫不全症(Combined Immunodeficiency)、(3) 免疫グロブリンクラススイッチ異常症(高IgM症候群)、(4) 伴性劣性リンパ増殖性症候群(X-linked lymphoproliferative disorder)、(5) 胸腺腫を伴う免疫不全症(Good症候群)などの疾患が含まれていることが明らかになっている。
  • 日本では2009年に、厚生労働省難治性疾患克服事業において、「分類不能型免疫不全症に関する研究班」が立ち上がり、全国調査や検査により日本におけるCVIDの実態や、免疫学的特徴が明らかになった。
  • 上記研究班では、CVIDを「成熟Bリンパ球、特に記憶B細胞、および抗体産生細胞である形質細胞への分化障害による低グロブリン血症を認め、易感染性を呈する先天性免疫不全症候群」として捕らえることを提唱した。研究の中で分子異常が明らかになり、今後疾患概念が再整理されることが期待される。

CVIDの病因

CVIDでは現在までにCD19, CD21, CD81, CD20, BAFF-R, TACI, ICOSなどが責任遺伝子として同定され、新たな疾患として独立したが、未だに分類上はCVIDの範疇に入っている。ICOSを除き、B細胞上に発現する分子である。

  • ICOS欠損症:ICOSは活性化に伴いT細胞上に表出され、B細胞上のICOS-Lと会合し、シグナルを伝えるが、ICOS欠損ではT細胞に大きな欠陥が認められ、Th1, Th2, Th17, IL-10 producing Tregの減少及びIL-2, IL-22を除くサイトカイン産生の低下を示した。T細胞全体としては記憶細胞の著減が特徴的である。B細胞数は減少し、特に記憶B細胞の低下が顕著である。ICOSは自己免疫の成立に重要な分子とされているが、その欠陥により自己免疫疾患を合併することがある。
  • TACI欠損症、BAFF-R欠損症:ICOSと同様の補助分子としてBAFF-Rに会合するBAFFがあげられる。またBAFFにはBAFF-R以外にTACIおよびBCMAが会合する。さらにTACI, BCMAはBAFF類似分子であるAPRILにも会合する。
    TACIの異常は両アリルの異常でも片アリルの異常でも生じ、表面発現に影響を与えない場合が多い。患者ではB細胞数は減少し、記憶B細胞数も減少する。低γグロブリン血症以外に、自己免疫疾患やリンパ増殖所見が顕著である。IgA欠損症の責任遺伝子としても知られ、IgA欠損症とCVIDが相互に移行する疾患群であることを支持する1つの証左ともなっている。
    BAFF-R欠損症は同様に低γグロブリン血症を呈し、上下気道炎を反復するが、真菌感染症、帯状疱疹などT細胞機能異常を示唆する患者が存在する一方、健常者もあり、その症状は様々である。
  • CD19/CD21/CD81欠損症:CD19, CD81, CD21はCD19複合体を形成する分子群であり、B細胞受容体を介したシグナルは減弱するが、B細胞は存在する。しかし、分子欠損により骨髄における正常なB細胞の発生と成熟が犯されていると考えられている。
  • CD20欠損症:この疾患ではB細胞数は正常であるが、T非依存性抗体産生に欠陥があるとされている。
  • その他の候補遺伝子:TNF-TNFRファミリーに属する分子で、T-B相互作用に重要とされるものにつき、遺伝子解析が精力的に行われているが、今のところAPRIL, BAFF, BCMAの分子異常は見つかっておらず、少なくともCVIDのmajorな集団ではないことは明らかである。後述するようにさらなる遺伝子同定戦略が必要である。

CVIDの臨床像

  • 患者数・頻度:2009年10月までに、全国調査によって199名のCVIDについての情報が集まった。おそらく、その5倍~10倍程度(1,000~2,000名)の患者がいるものと思われる。
  • 発症年齢:CVIDでは特徴的な発症時期はないが、2歳未満で診断に至った症例も27例であったが、多くは2歳から20歳までに何らかの症状を呈している。2歳未満発症の患者も現在は、大半は10代を越えていて、B細胞欠損でもT細胞異常症での範疇にも入らない疾患である。一方50歳を越えて診断される患者も7名あり、悪性腫瘍を含む合併疾患や薬物の影響の否定などが重要となってくる。現時点での年齢は2歳から77歳でピークは20-30歳であった。
  • 身体的特徴と症状:感染症としては低ガンマグロブリン血症によるいわゆるsinopulmonary disease(上下気道感染症)が多いが、EBV感染症、CMV感染症、パピローマウイルス感染症、真菌感染症などT細胞機能不全を疑わせる症例も散見される。
    身体的特徴としては肝脾腫を呈する症例が比較的多いこと程度であり、皮疹(アトピー様、乾癬様、多型滲出性紅斑様など)、神経症状、発達遅滞などの合併も認める自己免疫疾患を合併するものは全体で19%、40歳以上で36%、悪性腫瘍の合併は全体で10%、40歳以上で19%であった。自己免疫疾患として最も多いのは、自己免疫性溶血性貧血や血小板減少症であるが、関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発筋炎など様々な疾患を認める。悪性腫瘍ではリンパ系悪性腫瘍が多いが、甲状腺腫瘍、子宮頚癌、消化器系腫瘍も散見される。

CVIDの免疫学的特徴

  • B細胞では、CD27+クラススイッチ記憶B細胞が減少しており、それ以降の形質芽細胞の減少も認められた。一方IgM陽性記憶細胞は様々なデータを示した。Naïve B細胞に至る前の移行B細胞の段階で増加が認められる症例もある。
  • T細胞ではNKT細胞が減少する群や、増加する群がある一方、TCRVβレパートアは約50%で偏りを認めた。NK細胞も著減群と増加群を認める。
  • T細胞、B細胞新生能をTRECs, KRECs測定にて検討した結果、TRECs, KRECsが共に低いものが12-15%、TRECs、KRECsが単独で減少する群が、10%程度と約2/3ではBあるいはT細胞の新生能に欠陥があることが明らかになっている。
    上記のように、一定した傾向にないことが特徴とも言える。

CVIDの診断

  • 一般的な免疫学的スクリーニングに加え、同種血球凝集素や特異抗体の測定は必須である。
  • 除外診断であることから、下記に記載する既知の免疫不全症の除外が重要である。*はKRECsにて除外可能であり、下線のものはFlow cytometerで、は特徴的身体所見や症状で鑑別が可能である。

    (1) B細胞欠損症*
      BTK, IGHM, CD79A, CD79B, λ5, BLNK

    (2)リンパ増殖性疾患
      SAP, XIAP, ITK

    (3) 複合型免疫不全症(SCIDを含む)*
      ADA, PNP, (CD25, STAT5b,) ITK, DOCK8, LIG4 , NHEJ1, NBN , RMRP, ATM

    (4) 免疫グロブリンクラススイッチ異常症(高IgM症候群)
      CD40LG, CD40, AID, UNG, PMS2, RNF168 , NEMO

    (5) 胸腺腫を伴う免疫不全症 (年長者が大半である)

    (6) IgGサブクラス異常症

    (7) その他
      ICF (DNMT3B), VODI (SP110), WHIM (CXCR4),TCII 

  • 悪性腫瘍、感染症、低栄養、代謝疾患、薬物(例:化学療法薬、免疫抑制薬)などに伴う二次性免疫不全症を除外することも重要である。

CVIDの治療

  • IgG値は一桁から600-700mg/dL程度と様々である。γグロブリン補充が最も重要なICOS欠損症でも600mg/dL台の症例もある。いずれにせよ、現在のIgGレベルで易感染性を有するということを原則とし、IgG値が+300mg/dLとなるように設定し、感染症頻度を鑑みてさらに追加を考慮する。
  • 明らかにT細胞免疫不全症があるものではPneumocystis感染症予防のためのST合剤、真菌感染症予防のためにITCZなどを用いることがある。
  • 合併する自己免疫疾患に対してはPredonisoloneやCyclosporinが必要になる場合がある。投与する場合には必要最小限とすること、定期的なEBV, CMVなどのウイルスの監視が重要である。
  • 造血細胞移植が選択される症例は数が極めて数が少ないが、今後原因解明と共に根治的治療法が確立されることが期待される。
  • 成人患者が多く、就学就労などの面で大きな問題を抱えている。一方外見上は健常と捕らえられることが多く、精神的に負担を抱える患者も多い。今後社会福祉面・心理面での支援も重要である。
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