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BTK欠損症

【監修】
富山大学
宮脇 利男先生

原理

  • 責任遺伝子はX染色体長腕に局在するBruton’s tyrosine kinase (BTK)。BTKのコードする蛋白はチロシンキナーゼという酵素の一種で、B細胞に主と発現している。単球や血小板にもみられるが、T細胞には発現していない。B細胞の分化や増殖に重要な働きをもち、B細胞の前駆細胞であるプロB細胞から未熟B細胞への分化障害が生じ、成熟B細胞が欠損し抗体がほとんど作られず、結果として低または無ガンマグロブリン血症となる。
  • BTK遺伝子の変異は様々で、300以上知られている。
  • X連鎖劣性遺伝形式をとり、基本的に男子のみが発症する。
  • 発症頻度は出生男子10万〜25万に1人と推測されている。

特徴・症状

  • 細菌感染に罹りやすいことが特徴、しばしば反復する。感染としては、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎や肺炎等の呼吸器感染、皮膚化膿症、消化管感染症、髄膜炎や敗血症をみる。
  • よくみられる病原体として、インフルエンザ桿菌、肺炎総球菌、ブドウ球菌、緑膿菌、ランブル鞭毛虫、カンピロバクターがある。
  • 初発の感染症状は、通常、経胎盤由来の母親からの移行抗体が減少する生後4〜6か月以降、5歳までにみられる。
  • 適切な治療がなされないと、気管支拡張症等の慢性肺疾患になり、日常生活に支障をきたす。

診断

  • 血清免疫グロブリンのIgG、IgAおよびIgM、全てクラスの値の低下が著しく、男子の場合、XLAが強く疑われる。
  • 末梢血のT細胞の比率が正常で、B細胞比率が1%以下の男子の場合、XLAの可能性が高い。
  • 確定診断はBTKの遺伝子解析で変異をみつけることでなされる。しかし、フローサイトメトリーにて単球におけるBTK蛋白発現が減少していることを調べることで簡便に診断できるようになっている。

治療法

静注用免疫グロブリン製剤(IVIG)の定期的補充療法にて感染の頻度を抑えることができるし、長期予後を著しく改善できる。

  • IVIG に含まれるIgGで生体内での半減期は約21日で、IVIGの定期的補充療法には、IVIGとして体重kgあたり200〜600 mgを3〜4週間隔で投与する。
  • 血清IgGが最も低い投与直前のトラフ値は少なくとも500 mg/dlを越えていることが望ましい。感染の状態によっては、もっと高いトラフ値を維持することもある。
  • 一般的には、抗菌薬の予防投与はなされないが、慢性肺疾患を合併している場合は抗菌薬の投与が必要となる。

最新情報(今後の動向)

欧米では、免疫グロブリンの定期補充として在宅における皮下注射療法で広く行われ、患者のQOLの向上につながっている。わが国においては治験が進んでいて、近い将来実施可能となることが期待される。

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