HOME > ドクターインタビュー > vol.01 山崎 崇志 先生

原発性免疫不全症候群の診断や治療は、どんどん進歩しています。
あせらずに、あきらめずに。

信州大学医学部附属病院小児科

山崎 崇志 先生

山崎 崇志 先生

2008/09/26UP

原発性免疫不全症候群の患者さんとは一生のおつき合い

本来私たちの体には、病原体などから体を守るための“免疫機能”が備わっていますが、原発性免疫不全症候群とは、この免疫機能が生まれつき十分働かない病気です。
現在、私たち信州大学医学部附属病院小児科が診療している原発性免疫不全症の患者さんは、表に示すとおり約30名ですが、一過性の抗体産生不全や一過性の好中球減少などの軽症例、あるいはまだ原因不明の免疫不全の症例などを含めるとこの倍以上になります。
その種類はさまざまで、この中には骨髄移植を受けられた患者さん、あるいはすでに成人された患者さんもおります。原発性免疫不全症候群は乳幼児期に発症することが多く、患者さんやご家族とは一生のおつき合いになります。

【表:信州大学の原発性免疫不全症候群の患者さん】

病気の種類 人数
主に抗体不全が原因 18名
X連鎖無ガンマグロブリン血症 6名
高IgM症候群 1名
高IgE症候群 2名
IgGサブクラス欠損症 2名
IgA欠損症 3名
分類不能型免疫不全症 4名
主に細胞性免疫不全が原因 3名
重症複合免疫不全症 3名
主に食細胞機能不全が原因 5名
慢性肉芽腫症 4名
好中球二次顆粒欠損症 1名

2008年6月末現在

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診断にはある程度時間がかかりますが、あせらないで

原発性免疫不全症候群の患者さんの多くは、発熱を繰り返す、と訴えて来院されます。しかしこのような症状を示す病気は多く、原発性免疫不全症候群という診断に至るまでにはいくつもの過程を経なければなりません。
まず、発熱の原因を突き止めます。長引くあるいは繰り返す発熱の3大原因としては、感染症、膠原病、悪性腫瘍が挙げられ、最近は、自己炎症疾患という病気の存在も明らかになってきました。私たちは、これらのすべての病気の可能性を念頭において、問診から始まり診察やさまざまな検査を行います。その結果、発熱の原因が感染症であることがはっきりした場合に、感染症が繰り返されたり重くなったりする原因を調べ、免疫異常の有無を判断します。免疫異常があると考えられた場合、複雑な免疫系のどの部分に障害があるのかを順番に調べていきます。

診断にはある程度時間がかかりますが、あせらないで

フローサイトメトリー

問診や症状から免疫異常がどの部位にありそうかある程度予想できることも少なくありませんが、頻度が少ない疾患や原因がはっきり判明していない疾患の場合は、どのような病態が存在するのか丁寧に調べていく必要があります。その場合、診断までに時間がかかることもありますが、原因を突き止めるための大切な過程ですから、根気強く検査を受けてください。

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治療で一番重要なのは、感染症をうまくコントロールすること

治療で一番重要なのは、感染症をうまくコントロールすること

e-免疫日記監修Dr. 上松一永先生と山崎先生

原発性免疫不全症を治療する上でもっとも重要なのは、感染症のコントロールです。いったん感染症を起こすと長引いたり、重症化したりすることがあり、入院が必要になる場合も少なくありません。抗生物質の予防内服やガンマグロブリンの投与などが必要ないか主治医とよく相談することが大切です。
日常生活では手洗い・うがいを励行すること、安易に人混みの多いところに近づかないことが重要なのは言うまでもありません。また、家族内での感染をできるだけ予防するために、兄弟に園児や学童がいる場合は流行の感染症に注意したり、必要に応じてご家族に予防接種を受けていただいたりすることもアドバイスしています。ただ、あまり生活に制限を加えるとそれがストレスになったり、充実した学校・社会生活を送れなくなったりすることもあり、慎重な対処が大切と考えております。
運動会や遠足、部活動への参加など、主治医の先生とよく相談しながら、ひとつひとつの対処法を一緒に考えていくようにしてください。

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遺伝子検査が大きく進歩。将来は遺伝子治療の

原発性免疫不全症の診断あるいは治療の分野では次々と新しい知見が得られたり、新しい技術が開発されたりしています。たとえば、遺伝子解析により、患者さんの免疫系のどの部分に異常があるのかが、かなりわかるようになりました。当科では、重症複合免疫不全症の原因の一つであるArtemis遺伝子の異常について国内で初めて報告を行い、その業績は世界的にも認められています。診断に関してのトピックスとしては、重症複合免疫不全症やX連鎖無ガンマグロブリン血症といった免疫不全症が、先天性代謝異常のスクリーニングと同様に生後間もなくの検体でスクリーニングすることが技術的には可能となり、実用化されることが期待されます。免疫不全症があることを知らないまま予防接種を受けるとそれにより発症し、重症化する場合があり、家族歴などの問診が大切であることはもちろん、スクリーニング検査は重要な位置を占めるものと考えられます。
治療に関しては、重症複合型免疫不全症や慢性肉芽腫症などの重症疾患では骨髄移植で治癒させることが可能になり、その技術も進歩しています。さらに世界的には遺伝子治療の応用が進んでおり、解決しなければならない問題はまだ多いものの、様々な免疫不全症への実用化が期待されています。また、ガンマグロブリン製剤も外来で点滴投与しなくても、家庭で投与できる製剤が使用されるようになるかもしれません。
このように、原発性免疫不全症候群を巡る状況は、大きく変わりつつあります。患者さんやご家族の方にはぜひ希望をもっていただき、じっくりと治療に取り組んでもらいたいと思います。

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