HOME > ドクターインタビュー > vol.02 蒲池 吉朗 先生

臍帯血移植の登場により、多くの患者さんが救われるように。
早期スクリーニングの導入により、よりよい状態で移植が行えることを期待!

名古屋大学医学部附属病院小児科

蒲池 吉朗 先生

蒲池 吉朗 先生

2008/10/20UP

主要な原発性免疫不全症を網羅

私たち名古屋大学小児科免疫グループでは、現在、原発性免疫不全症の患者さん30名弱を診療しています(表)。重症複合免疫不全症(SCID)が9名ともっとも多く、またまれな病気であるアイペックス(IPEX)症候群や、ウイム(WHIM)症候群の患者さんも診ています。過去の患者さんを含めると、現在わかっている主要な原発性免疫不全症のほとんどを網羅していると思います。

【表:名古屋大学で現在診療している 原発性免疫不全症の患者さん】

病気の種類 人数
X連鎖無ガンマグロブリン血症 7名
高IgM症候群 3名
分類不能型免疫不全症(CVID) 3名
重症複合免疫不全症(SCID) 9名
慢性肉芽腫症 1名
アイペックス(IPEX)症候群 2名
ウイム(WHIM)症候群 1名
ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS) 1名

2008年8月末現在

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移植治療の進歩により、重症複合免疫不全症は治る病気に

当院では、1977年に重症複合免疫不全症(SCID)の第1号を診断し、1981年にSCIDに対して骨髄移植を日本で初めて成功させて以来、この病気の治療を伝統的に数多く手がけてきました。現在までに19例のSCID患者さんに移植を行い14名が生存中です。これは単一施設としては日本では一番多い数です。
移植治療は、近年大きく進歩しています。当初は、HLA(白血球の型)が一致する兄弟がいなければ、骨髄移植を受けることができませんでした。その後、両親の骨髄中のリンパ球から成熟したリンパ球を除去して移植するハプロ移植や骨髄中の造血幹細胞だけを取り出して移植する造血幹細胞移植などが行われてきましたが、成績が思わしくなかったり、移植までに時間がかかるなどの理由で、あまり普及しませんでした。このような中登場したのが、へその緒の血液を使用する臍帯血移植です。日本では、諸外国に比べ臍帯血移植の成績が非常によく、また臍帯血バンクは骨髄バンクと異なり、登録してから最短で約2~3週間で移植が可能です。臍帯血移植により、多くの患者さんが救われるようになりました。

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SCIDのスクリーニング技術も確立されている

SCIDのスクリーニング技術も確立されている

シークエンサー

また最近では、SCID早期発見の道も開かれつつあります。
現在、新生児健診の一環として行われている代謝疾患のスクリーニングに用いる血液検体を用いて、SCIDのスクリーニングを行う技術が、すでに開発されています。SCIDの発症は、新生児5~10万人に1人といわれており、現在スクリーニングの対象となっている代謝疾患の中には20~30万人に1人という病気も含まれていることを考えると、SCIDのスクリーニングを新生児スクリーニングに組み込むことは十分に現実的で、米国では、すでに試験的に行われている州もあります。日本でも早期導入できるよう、私たち小児科医が行政に働きかけていかなければならないと考えています。

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軽度の感染症も、繰り返すうちに重大な合併症に

X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)や分類不能型免疫不全症(CVID)などの患者さんに対しては、できるだけ他の子ども達と同じ、普通の日常生活を送るようアドバイスしています。ただしこれは、2~4週間に1 回、定期的に通院して、免疫グロブリン補充療法を受けることが大前提です。学童期のお子さんの場合、ご両親はどうしても通院によって勉強が遅れてしまうことを心配されます。でも、学業を優先して治療をおろそかにすると、将来、患者さんが合併症を抱える大きな原因になってしまいます。
以前は、免疫グロブリン補充療法は、肺炎や髄膜炎などの大きな感染症を起こさないための必要最小限の補充を行えばよいと考えられていました。しかしその結果、中耳炎や副鼻腔炎、気管支炎などの気道感染を繰り返して肺が徐々にダメージを受け、最終的には在宅酸素療法が必要になる患者さんが出てくるようになりました。
そこで最近は、軽度の感染症もできるだけ起こさないため、血中の免疫グロブリン濃度を高く保つことが重要と考えられるようになってきました。そのためには、頻回の治療を受ける必要があります。将来のことを考えると、現段階では治療を第一に考えていただきたいと思います。

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不安や悩みがあればいつでも来院を

当院では、20年以上前に移植を行った県外に住んでみえる患者さんとも、現在も連絡を取りあっています。これは患者さんにとっても非常に安心感があるようで、「一度、診せてください」と連絡すると、皆さん、喜んで来院されます。移植が成功し地元に戻ったらそれで終わりではなくて、患者さんのことは、その後も多くの医師やスタッフが見守っています。ですから、不安や悩みがあればいつでも来院を、と言いたいですね。

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