HOME > ドクターインタビュー > vol.03 西小森 隆太 先生

新しい研究に挑むのが大学病院の使命。研究成果を患者さんに還元していきたい

京都大学病院小児科

免疫・アレルギー診療グループ

西小森 隆太 先生

西小森 隆太 先生

2008/12/16UP

移植のために紹介されてくる患者さんも多い

私たち京都大学病院の小児科では、現在、原発性免疫不全症の患者さん12名を診療しています(表)。重症複合型免疫不全症(SCID)および慢性肉芽腫症各3名をはじめ、比較的まれな外胚葉形成不全免疫不全症候群も1名診療しています。特に外胚葉形成不全免疫不全症候群については遺伝子診断に携わった方々のコンサルトもしております。当科の血液・悪性腫瘍診療グループでは、原発性免疫不全症の骨髄移植を積極的に行っており、移植のために紹介されてきた患者さんもおられます。

【表:京都大学の原発性免疫不全症候群の患者さん】

病気の種類 人数
重症複合型免疫不全症(SCID) 3名
高IgM症候群 1名
分類不能型免疫不全症 2名
毛細血管拡張性運動失調症 1名
外胚葉形成不全免疫不全症候群 1名
慢性肉芽腫症 3名
家族性血球貪食症候群 1名

2009年6月現在

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細胞マーカーを利用した検査に注力

全国13大学のグループでは、各大学がそれぞれの得意分野で協力し合っています。私たちの研究室が7~8年前から取り組んでいるのは、ある細胞の目印となる特殊な構造を検出する、細胞マーカー検査です。たとえばX連鎖性SCIDの体細胞モザイクという大変珍しい患者さんを診断したことがあるのですが、T細胞、B細胞、NK細胞それぞれをさらに細かく細胞マーカーで評価する事で、診断にこぎつけることができました。つまり全体でみていても原因がよく分からなかった症例でも、網羅的な細胞マーカー評価、加えて1細胞レベルでの評価により診断の手がかりが得られる事があります。検査のためにいただける血液量の限られている患者さんの診断においては、今後も大変重要な分野と考えております。また現在このような網羅的な細胞マーカー評価は全国13大学で統一されたフォーマットが決まろうとしております。

細胞マーカーを利用した検査に注力

フロサイトメトリー・細胞ソーティング装置

加えて当科の特徴としては、日本で外胚葉形成不全免疫不全症候群の遺伝子診断を主導してきた経緯もあり、患者さんの検体が集まってくるため、診断に必要な検査は一通りなんでもできる体制をとっています。さらに今年に入ってからは、家族性血球貪食症候群のスクリーニング検査も手がけるようになりました。私たちの研究室は、大学病院であることもあって比較的人員が多いので、新しいことに取り組む柔軟性をもっていると自負しています。

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iPS細胞を利用した研究にも着手

また最近、人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced pluripotent stem cells)を利用した研究を開始しました。iPS細胞とは、当大学の山中伸弥教授が中心となって確立した、あらゆる細胞に変化する能力をもつ“万能細胞”のことで、新聞でも大きく報道されました。iPS細胞の技術を利用することにより、患者さんの皮膚細胞を少し取って免疫細胞を作り、病気の原因や病態を調べることができるのではないかと考えています。この研究は、はじめたばかりで臨床に役立つ成果は上がっていませんが、多くの可能性をもった研究です。このように新しい研究に挑み、その成果を患者さんに還元していくことが、大学病院の使命だと思っています。

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診療で得られるさまざまな情報を集積することにより、研究は前進してゆく

原発性免疫不全症の原因や病態は、かなり解明されてきているとはいえ、まだまだわからないことが多いのが現状です。しかし、今はまだわからなくても、1年後にはわかることもあるはずですし、日常診療の中で、患者さんの症状や治療に対する反応をみているうちに、わかってくることもあります。わたしたちは、決してあきらめずに病気の原因を探索し続けていかなければいけないと思っています。もちろん、急を要する患者さんに対しては、まずは治療を開始することが重要ですが、基本は、正確な診断のもとに患者さんの症状にあった治療を行っていくことだと考えています。そうして、病気の原因やその経過、患者さんの症状などが明らかになったら、これをしっかりと記録、蓄積していくことが今後の医療技術の発展のためにも重要だと考えています。
最近、原発性免疫不全症の症例を集めたデータベース(PIDJ)が構築され、日本全国の症例が検索できるようになりました。今後、このデータベースをうまく活用していくことにより、原発性免疫不全症の研究は、さらに前進するのではないかと期待しています。

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